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 勾配のきつい所は避けよう。長時間停車すると空気が漏れてブレーキが緩むからだ。電力があれば圧縮空気を補充できるのだが、停電する、または安全のため意図的にパンタグラフを下げる場合、送電を止める場合もあるので、電力がなくなる可能性がある。基地でパンタグラフを下げるときはレールと車輪の間に「手歯止め」と呼ぶクサビ状のストッパーを挟む。空気を使わない「留置ブレーキ」を装備した車種もあるのだが、どちらも平らな土地向け。

 橋の上や川沿いの低い所、切り通しなど浸水の恐れのある所、崖下、倒れそうな巨木の横も避ける。そうそう、ゴルフ練習場の横も。

 通常の山岳トンネルは中が高く、両側が低くなっている。水はけのためである。ここは問題ない。勾配もきつくはないことが多い。ただし地下鉄はトンネルのような“中高”ではないので避ける。

 忘れないようにしたいのは、地上の鉄道と直通運転しているところは車両を預かってもらうように協定を結んでおくこと(図3)。協定先の運転士は出払っているはずだから、地下鉄の運転士が自分で待機地点まで回送する必要がある。その路線を走れるように習熟運転を済ませておきたい。

図3 東京地下鉄の千住検車区
図3 東京地下鉄の千住検車区
奥は隅田川(筆者撮影)
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 直通をしない銀座線、丸ノ内線などはどうするか……(図4)。想像しただけでくらくらしてきた。解決策を思いつくまで、この件はスルーさせていただきます。

図4 東京地下鉄の中野検車区
図4 東京地下鉄の中野検車区
手前は善福寺川。撮影地点の下流で神田川と合流する(筆者撮影)
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 できるだけ駅に待機するのが基本になる。運転士、車掌が動けなくても運転再開まで駅の宿泊設備を使える。幸い在来線は駅が多い。

 駅に収容しきれなければ駅間に待機する。二次災害を避けたいので無理はせず、運転士は車中泊が良いだろう。そのため営業運転を打ち切る駅で寝袋と食料を積み込む。どの列車に積むかは運行管理システムが駅に指示する。車掌は手前の駅で降り、そこから動けなければ駅に泊まる。

 地点ごとに待機できる両数を決めるのも大切である。踏切の間隔が短い場合、その間隔より短い列車しか置けない。駅で待機する場合、ホームの長さより短いB編成を中央に置き、その前後にホームの長さいっぱいのA編成、C編成を並べれば3編成は置ける(図5)。A編成の後ろの乗務員室ドアがホームにかかっていれば車外を通らずにホームまで出られる。普段とは違う位置に止めるので、停止位置目標の標識を立てておきたい。

図5 駅に待避する場合の並べ方
図5 駅に待避する場合の並べ方
順番を工夫すれば3編成は置ける。
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 こうして待機する地点のリストを完成させておく。後編では、リストに基づいて避難する手順を考えてみる。