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 JR東日本/JR西日本は台風19号で水没した北陸新幹線用の車両を廃車すると発表した(図1)。被害額は諸説あるが150億円程度。車両基地1は広くて平らな土地にある。「広くて平らな土地」の多くは沖積(ちゅうせき)平野なので、人類がいない頃を含めれば一度は氾濫している。各社とも“明日は我が身”である(図2)。

1 運転所、電車区など呼び方はさまざま。ここでは一般名詞として車両基地、基地とする。

図1 浸水したJR東日本長野新幹線車両センター
図1 浸水したJR東日本長野新幹線車両センター
(写真:共同通信社)
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 基地を高台に移転することは大変なお金がかかるので現実的ではない。排水ポンプを強化するという提案もあるのだが、排水した先に迷惑をかける2。迷惑をかけないように海まで配管すれば、やはり大変なお金がかかる。歴史に学び、“鳥飼(とりかい)方式”で高台にある線路に避難するのが順当だろう。

2 川の水位が下がった後に復旧を早める使い方なら問題はない。

図2 京王電鉄の富士見ヶ丘検車区
図2 京王電鉄の富士見ヶ丘検車区
手前は神田川。富士見ヶ“丘” …なのに(筆者撮影)
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鳥飼で昭和に起きたこと

 1967年7月、大阪府茨木市鳥飼にある東海道新幹線・大阪運転所の横を流れる安威(あい)川が増水し、所内は水につかった3。当時の国鉄は13編成を京都・鳥飼間の上り線に並べた。保線機械など動かせるものはすべて逃がした。新大阪止まりで鳥飼に入庫する予定の5編成は入庫させなかった。車両の被害はなし。ファインプレーである。

3 斎藤雅男「新幹線安全神話はこうしてつくられた」, 2006年, 日刊工業新聞社.

 新幹線の対策はこれでいいだろう。踏切がなく高架やトンネルが多い。路線の長さに対して編成の数が少ない。長野でなぜこうしなかったのかは不思議だが、それを追求することは趣旨ではないので、“未来志向”でスルーしておく。

 問題は踏切のある在来線である。踏切上に列車を止めると道路交通を邪魔してしまう。新幹線より話は複雑だ。ここでは在来線の避難方法を考えたい。

 申し訳ないが、ATOS(東京圏輸送管理システム)4など運行管理システムのある路線、TIMS(列車情報管理システム)のある車両を対象として話を進める。これらの普及率は100%ではないが、主要路線では普及しているので、多くの車両を救えるだろう。

4 以下、会社によって名前が違うものはJR東日本の呼び方を使う。

日ごろの準備がモノを言う

 まずは平時のうちに待機させる地点を調べ上げて、リストを作る。次の場所は避けたい。

 前述の踏切。

 曲線はカント5があるので横風に弱い。カント量の大きな曲線は避けたい。計算上は倒れないことになっているのだが、「念には念」が鉄道人の行動規範である。

5 曲線を回るときの遠心力で乗客が不快にならないように、内側のレールより外側のレールを高くする。高さの差がカント量。