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 JR東日本/JR西日本は台風19号で水没した北陸新幹線用の車両を廃車すると発表した。水没しそうな車両基地は、ほかにもいくらでもある(図1)。ここでは新幹線よりもっと難しい在来線で水没を避ける方法を考えたい。前編は待機地点の選び方を記した。後編では避難手順を考える。「逃げるは恥だが役に立つ」のだ。

図1 JR東日本大宮総合車両センターの東大宮センター
図1 JR東日本大宮総合車両センターの東大宮センター
左は芝川(筆者撮影)
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 避難が必要な雨量であれば計画運休をするだろう。当日、計画運休が始まる前に避難するかどうかを決断する。公表された天気予報、川の水位、ダムの放流予定時刻、PreDAS(防災情報システム)が持っている雨量計の情報を運行管理システムに取り込み、重要度、切迫性が分かりやすいように表示する。迷ったり悩んだりする時間はない。「このくらいなら避難」という基準を普段から決めておく。“空振り”でも支出は労務費くらいなので、しきい値は低めがよい。

 日経 xTECHの記事の常としてAI(人工知能)を使いたくなるが、今回はAIなしで考える。2020年の台風シーズンに間に合わせるために、最小限の手直しで乗り切りたいからだ。ほどほどの予算で済ませる。システムは情報を収集、整理、提供、立案するだけ、調整と決断は指令員に任せる。列車ダイヤが乱れたときに今やっている運行管理と同じだ。

 まず、車両の状況を把握する。運行管理システムが持っているダイヤ情報から運休する瞬間の車両の並び順を予測する。既に速度規制などによってダイヤが乱れているはずなので、この並び順は時々刻々変わる。

 把握したあと、「この列車はこの地点に待機」という割り振りを決め、待機地点までの臨時ダイヤを作成する。あらかじめ選んであった待避地点から当日使える地点を絞り込み、各編成をできるだけ等間隔に並べる。「等間隔」が大事で、理由は後述する。

 両端のa駅、c駅で運転を打ち切った列車は折り返して、それぞれの待機地点に向かう(図2の緑線)。中間b駅に基地がある場合、b駅で客扱いを終えた列車(図2の黄線)はそのまま前進させて待機地点まで回送する(図2の赤線)。基地にいた列車は基地から出して本線上に並べる(図2の青線)。

 b駅から待機地点に向かって、その線の能力いっぱいの列車を走らせることになる。こうすると基地を背にした線にある列車の比率が高くなる。図2を見ても、a駅とb駅の間より、b駅とc駅の間の方が待機する列車は多い。このため一部を折り返し、基地に向けておくことによって等間隔を守る。

図2 b駅から待機地点までの臨時ダイヤのイメージ
図2 b駅から待機地点までの臨時ダイヤのイメージ
黄色は打ち切る前の列車、赤は打ち切った後の回送列車、青は基地から出した回送列車。緑はa駅で運転を打ち切り、折り返して待機地点に向かう列車、tは待機地点に到着する時刻。tがそろっているが、実際には待機地点の配置と編成数によってバラつく。
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 待機地点を各列車に伝える方法だ。全列車が対象になるので、司令員と音声でやりとりしていては間に合わない。ここは通告伝達システムを使いたい。運転室のディスプレーに「〇〇駅に待機」「〇〇第×踏切の手前に待機」と指示を伝える仕組みを新たに設ける。TIMS(列車情報管理システム)で現在の位置が分かるので、最後は「あと△m」の表示に切り替えるくらいはやりたい。