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 世界的な半導体不足が国内ITサービス大手の業績に影を落としている。半導体を使うネットワーク機器やサーバー、ストレージなどの供給が遅延しているのが主な原因だ。半導体不足の解消のめどは一向に立っておらず、2022年いっぱいは状況が変わらない懸念すらある。

「想定した以上の影響」

 「上期末(2021年9月末)に想定した以上の影響を受けている」――。富士通でCFO(最高財務責任者)を務める磯部武司取締役執行役員専務は、2022年1月27日に開いた2022年3月期第3四半期(2021年4~12月期)の決算説明会で、半導体不足の影響についてこう述べた。

 想定以上とはどの程度の影響か。半導体不足に起因する部材の供給遅延により、2021年4~12月の9カ月累計で減収額が397億円、営業損益のマイナス影響は190億円に及んだという。このうち第3四半期(2021年10~12月)単体だけで減収額は248億円、営業損益へのマイナス影響は119億円に達しており、深刻さは増す一方だ。

 「半導体ショック」に見舞われているのは富士通だけではない。日経クロステックは主要ITサービス企業8社に緊急アンケートを実施し、状況をまとめた。

 富士通と同じく深刻な影響が出ているのがNECだ。半導体不足に起因する部材の供給遅延により、2021年4~12月の9カ月累計で減収額が160億円に達したことが今回のアンケート調査で判明した。

 2022年3月期第3四半期決算によると営業損益へのマイナス影響は70億円で、「通期では80億円と見込んでいる」。森田隆之社長兼CEO(最高経営責任者)は2022年1月31日に開いた2022年3月期第3四半期決算説明会でこう説明した。

 同じくメーカー系である日立製作所も、「上期(2021年4~9月期)は影響を受けた製品が限定的であったが、第3四半期からストレージやATMを中心にハードウエア製品に影響が拡大している」と広報がアンケートで回答。同社は具体的な金額を開示していないが、ITセグメントで見ると特に米国のストレージビジネスが影響を受けているといい、「(日立が販売する)ストレージ製品をつくり切れていない」と同社の加藤知巳財務統括本部グループ財務戦略本部長は2022年2月2日の決算説明会で説明した。

半導体不足が及ぼすITサービス各社への影響とその解消時期の予測
ITサービス企業8社の緊急アンケート回答と決算資料を基に作成
社名影響解消時期の予測
NEC半導体不足に起因する部材の供給遅延が発生し、2021年4~12月の9カ月累計で減収額は160億円、営業損益へのマイナス影響は70億円だった。営業損益へのマイナス影響は通期で80億円まで拡大すると予測する2022年末まで。早ければ夏の終わりから秋の解消を見込む
NTTデータネットワーク機器やサーバーなどで調達遅延や価格高騰などが発生。一部の案件で影響が出ている当面は続く(時期は非回答)
TIS影響は軽微非回答
伊藤忠テクノソリューションズ納期遅延や工事の遅れなどにより売上高で 100 億円程度が来期(2023年3月期)にスライドするリスクがある非回答
日本ユニシス2022年3月期第3四半期に計上予定だった案件が第4四半期以降にスライドし、売上高で10億円以上の影響が出ている2022年上期中は続くとみており、もう少し長引くことも想定
野村総合研究所影響は軽微非回答
日立製作所2022年3月期上期は影響を受けた製品が限定的であったが、第3四半期からストレージやATMを中心にハードウエア製品に影響が拡大している当面は続く(時期は非回答)
富士通部材の供給遅延が発生し、2021年4~12月の9カ月累計で減収額は397億円、営業損益へのマイナス影響は190億円だった。第3四半期単体で減収額は248億円、営業損益へのマイナス影響は119億円に達した2022年12月までは続く