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  JISAの実施指針は5つのステップの中から、特にシステム開発で解釈が難しい部分について具体的に例示している。最初のステップである「契約の識別」の場合、「契約書の調印は未了だが、着手依頼書や委託決定通知書などを受領した場合、収益認識基準で定義している契約に該当するのか」といった論点を取り上げている。

 収益認識基準では「契約」であると捉える条件について、「移転される財またはサービスに関する各当事者の権利を識別できること」などの5項目を挙げている。だが、システム開発に特化した記述はないため判断しにくい。JISAの実施指針ではこうした収益認識基準を読むだけでは判断しにくい16のポイントを選び、「検討すべき論点」と「論点として取り上げた背景・理由」、そして「実務対応案」を提示している。

工事進行基準を継続しても「検討」必須

 ITベンダーが収益認識基準を適用する際に悩ましいのは、5ステップに照らし合わせた結果、「工事進行基準を採用したままでも問題ない」と判断できるケースが出てくる可能性がある点だ。田中次長は「JISAの実施指針はなるべく現行の業務を変えずに、収益認識基準が求める会計処理を適用できるように記述した」と話す。

 ただし注意が必要なのは、現時点では「工事進行基準を採用したままでも問題ない」例を明確に示すのは監査法人でも難しい点だ。2021年まで収益認識基準の準備を進めるなかで、どういう場合であれば工事進行基準を継続的に採用できるかが、ITベンダーの担当者と監査法人との話し合いなどから決まってくる。明確に基準では示していないというわけだ。

 もちろん工事進行基準を採用中のITベンダーにとって、2021年4月以降もそのまま工事進行基準を採用できれば、業務変更などの負担が現場にかからず望ましい。しかし引き続き工事進行基準を採用する場合でも、必ず収益認識基準に沿って売り上げの計上方法を「検討」したかどうかの証拠を残して会計監査を受ける必要がある。

 参考になるのは既にIFRS(国際会計基準)を適用しているITベンダーの取り組みだ。収益認識基準は「IFRS15号」と呼ぶ基準を基に作成しており、全くの同一ではないものの、IFRS15号と収益認識基準は同様とみなせる。

 IFRSを適用しているITベンダーの1社がNTTデータだ。NTTデータの場合、IFRS15号適用後も一部のプロジェクトで工事進行基準を引き続き適用しているという。さらにIFRS15号から新たに適用になった、工事進行基準の後継と言うべき「原価回収基準」と呼ぶ売り上げ計上手法も利用しているという。

 NTTデータは2014年にIFRS15号が確定してから準備を始め、同社がIFRSを適用した前年度に当たる2017年度からIFRS15号の適用を開始した。準備には2年間ほどかかったという。

 ITベンダーが収益認識基準を適用し始めるまで既に残り2年を切っている。上場しているITベンダーの場合、準備が間に合わない場合は決算や有価証券報告書の遅れあるいは訂正につながり、市場や顧客の信頼を失いかねない。「あと2年」とゆっくり構える余裕はない。