全4898文字
PR

 新型コロナウイルス禍で普及が進んだはずのテレワークの実施率が2022年後半以降、じりじりと低下している。一方でテレワークに取り組むビジネスパーソンの継続意向度や満足度は今も上昇傾向にあり、企業と社員の認識のギャップは広がるばかりだ。出社勤務に戻るくらいならテレワークができる他の企業へ転職するといった自主退職者の急増も危惧される。企業は緊急避難的な対策ではなく新しい働き方として、テレワークに取り組む必要がある。

テレワーク実施率のダウントレンドが明確に

 日本生産性本部が2022年10月に発表した「第11回 働く人の意識調査」におけるテレワーク実施率は17.2%だった。同本部は2020年5月以降、四半期ごとに調査を実施してきた。長田亮生産性総合研究センター主任研究員によると、2022年7月以前の調査では、新型コロナの感染拡大の波が来るたびに、テレワーク実施率が増加する傾向にあったという。

 しかし、第7波のピークから間もない2022年10月に実施した今回の調査については、「前回調査から微増にとどまった感がある。特にこれまでの調査でテレワークをけん引してきた中・大企業において、テレワークの実施率が低下傾向にある」と長田主任研究員は説明する。調査開始以降、過去最低の水準だった2022年7月の前回調査と比べて、今回のテレワーク実施率は1.0ポイントの増加だった。

日本生産性本部の「働く人の意識調査」におけるテレワーク実施率の推移
日本生産性本部の「働く人の意識調査」におけるテレワーク実施率の推移
(出所:日本生産性本部の資料を基に日経クロステックが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 パーソル総合研究所が2022年8月に公開した「第七回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する調査」におけるテレワーク実施率は正社員ベースで25.6%だった。調査時期は、第7波に入りつつあった2022年7月13日から18日までだった。

 第6波の時期に当たる2022年2月4日から7日にかけて実施した前回調査に比べて、テレワーク実施率は2.9ポイント下がる結果となった。パーソル総合研究所の小林祐児上席主任研究員によると、今回の調査を実施した2022年7月は、新型コロナの感染者数は拡大傾向だったという。それにもかかわらず「多くの業種や都道府県、従業員規模別でテレワーク実施率が下がった。全国的なテレワーク実施率のダウントレンドが明確になった」と指摘する。

 これら調査結果の背景について、日本生産性本部の長田主任研究員は「緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などによる行動制限がなかったことが影響している」とみている。パーソル総合研究所の小林上席主任研究員は「多くの企業で、新型コロナに対する警戒心が薄れていること」などを挙げる。

テレワークの継続意向度は高い

 テレワーク実施率が伸び悩む一方、テレワークに取り組むビジネスパーソンの間で、テレワークの継続意向度は引き続き上昇している。

 パーソル総合研究所が2022年8月に公開した調査では、テレワーク実施者に向けてテレワークを続けたいかどうかを尋ねた。結果、「続けたい」との回答割合の合計は80.9%となり、2020年4月以降の調査で過去最高の値となった。2020年4月の調査でテレワークを続けたいと答えた割合は53.2%。これに比べて直近の調査では27.7ポイントも上がったことになる。

パーソル総合研究所の「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する調査」におけるテレワーク実施者の継続意向の推移
パーソル総合研究所の「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する調査」におけるテレワーク実施者の継続意向の推移
(出所:パーソル総合研究所の資料を基に日経クロステックが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 この結果について、小林上席主任研究員は、テレワークを前提に生活時間を組み立てたり、テレワークを進めながら配偶者と家事・育児を分担したりすることが定着したとみている。「通勤をはじめとするストレスフルな行動をカットできるようになったこともあり、一度慣れてしまった生活リズムや働き方を、もう一度、出社前提のものへ戻すことに、抵抗感が高まっている」(同)。

 テレワーク時の生産性も以前より高まっている。上記調査では、出社時の生産性を100%としたとき、テレワーク実施時の主観的な生産性は何%かも尋ねた。その結果、平均で89.6%となり、2022年2月に実施した前回調査よりも5.4ポイント高かった。小林上席主任研究員は、「テレワークが前提の業務に慣れてきたことが、生産性の向上につながっている。以前から、初めてテレワークに取り組む人の生産性が低いことは分かっていた。生産性が向上していくことは時間の問題だった」という。

 日本生産性本部の直近の調査でも、「コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか」といった質問をしている。その結果、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と回答した割合は合わせて76.7%と、8割近くになった。

 同調査ではテレワーカーに対して自宅での勤務の満足度についても尋ねている。その結果、「満足している」「どちらかと言えば満足している」と回答した割合の合計は、79.7%となった。「およそ8割のテレワーカーが好意的に回答している。業務の効率と心理的な満足度の両面から、在宅勤務が有効だとテレワーカーは捉えていると分かる」と長田主任研究員は分析する。

 テレワークの課題も改善しつつある。長田主任研究員は「部屋・机といった物理的環境やWi-Fiなどの通信環境、Web会議をはじめとするテレワーク用ツールなどの整備状況についても調査しており、徐々に改善傾向にある」と指摘する。「情報セキュリティー対策や、資料・データの共有・業務関連の手続きのデジタル化なども、調査の回数を重ねるにつれて改善されてきている」と続ける。