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子供のころに誰もが憧れたドラえもんの「ひみつ道具」は、いつの日に、どんな形で現実になるのか。日経コンピュータの創刊1000号を記念し、大胆予測した。AIなどデジタル技術の進化によって、今から3年以内に実現しそうな5つを紹介しよう。今回は「もはん手紙ペン」について取り上げる。

 このペンを持つだけで、書きたいことをきれいな文章にしてくれる――。ドラえもんのひみつ道具「もはん手紙ペン」を地で行くようなAI(人工知能)技術の開発が急ピッチで進んでいる。

 ドラえもんのもはん手紙ペンは、何も考えなくても書きたいことをすらすら書けてしまう道具だ。「年齢目もり」を使えば年齢にふさわしい表現で書いてもらえる。

©藤子プロ・小学館
©藤子プロ・小学館
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 琴線に触れるような感動的な文章を書くこともできる。漫画ではのび太がペンで書いた手紙を読んだドラえもんが「こ、こんなにも心をうつ感動的な手紙ははじめてだ」と泣いてしまったシーンもあった。

 もちろん現時点では「もはん手紙ペン」を完全に実現できる技術は存在しない。だが深層学習(ディープラーニング)の研究が進むにつれてテキスト生成の技術は急速に進化しており、今後2~3年で実用域に至る可能性がある。

 文章を作り出す技術は大きく「何を書くか」と「どう書くか」に分けられる。このうち「どう書くか」、いわゆる言語モデルの開発には、統計的機械学習と呼ばれる手法を用いていた。膨大な量のテキストを用意して「言語らしさ」をモデルに学ばせるもので、例えば「私はリンゴが」という単語列を言語モデルに入力すると、言語モデルは次にくる可能性が高い単語として「好き」を出力する。

 ただし、従来の統計的機械学習の手法はせいぜい数個前までの単語を基に次の単語を予測するもので、前後の文章から文脈を判断して適切な単語を予測するような、精緻な処理はできなかった。こうした言語モデルの研究が、深層学習の適用によって直近2~3年のうちに飛躍的な進歩を遂げた。