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子供のころに誰もが憧れたドラえもんの「ひみつ道具」は、いつの日に、どんな形で現実になるのか。日経コンピュータの創刊1000号を記念し、大胆予測した。画像認識やロボティクス、VRなどの技術進化によって、10年後つまり2029年には実用化しそうな8つの道具を示そう。今回は「スーパー手袋」について取り上げる。

 もっと力持ちになれば、重い荷物を軽々と持ち上げられるのに――。こんなことを思った経験はないだろうか。ドラえもんのひみつ道具「スーパー手袋」を使えば、こうした願いをかなえられる。のび太はスーパー手袋を装着するだけで、大木を軽々と振り回すなど怪力を披露している。

©藤子プロ・小学館
©藤子プロ・小学館
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 怪力とはいかないが、人間が持つ身体能力以上の「握力」を得られる装置が製品化されている。代表的な製品が、岡山県に本社を置くダイヤ工業が2017年10月に発売した「Power Assist Glove(パワーアシストグローブ)」だ。形状は名称通り手袋(グローブ)で、グローブは約50グラムと軽量だ。空気圧で「人工筋肉」を動かす。

 手の甲側に埋め込んだゴム製のチューブとその周りの伸縮性の布で人工筋肉を構成する。付属のコントローラーのスイッチを押すと、人工筋肉に二酸化炭素のボンベから加圧して指を曲げ、握力を補助する。

 ダイヤ工業によると、現在の主な用途は脳疾患で半身まひになるなどして物を握れなくなった人の生活支援やリハビリだ。パワーアシストグローブが補助する力は握力にして2キログラム程度。一般に800グラムほどの握力があれば日常生活の約8割をカバーできるとされる。利用者からは「買い物袋を自分で持てるようになった」といった喜びの声が寄せられているという。

 パワーアシストグローブのように身体に装着して人の動作を補助する装置は「パワードスーツ」と呼ばれている。握力を補助する手袋以外に、足や腰の力を補助する製品もある。パワーアシストグローブのような介護やリハビリ用途のほか、荷物の運搬に従事する工場や物流の現場での作業支援なども主要な利用分野だ。