全4005文字
PR

 新型コロナウイルスの感染拡大による社会への影響が計り知れない。よく行っている近所の飲食店は緊急事態宣言で普段の営業ができなくなった。一方、自粛で家にいる時間が長くなり、デリバリーやテークアウトのニーズも増える。そうした中で、大阪府茨木市の有志が茨木市限定のフード・デリバリー・サービス「IBAR EATS」を立ち上げ、飲食店/配達員/消費者のマッチングサービスを開始した。大手の米ウーバーテクノロジーズ(Uber Technologies)によるフード・デリバリー・サービス「Uber Eats」などもあるが、なぜIBAR EATSなのか――。今回は、ソーシャルイノベーションという視点からみたIBAR EATSに関する筆者の考察を紹介する。

「IBAR EATS」(イーバーイーツ)の誕生

 IBARとはIBARAKI(茨木)の略称だ。茨木市とは大阪市と京都市の間にあり、日本初のノーベル文学賞受賞者である川端康成が幼少期から青年期にかけて過ごした町として知られる。2020年4月の中旬に、茨木市の有志らが茨木市限定のフード・デリバリー・サービスとなるIBAR EATSを始めた。

IBAR EATSのホームページのトップページ
IBAR EATSのホームページ画面
執筆当時のもの。(出所:IBAR EATS)
[画像のクリックで拡大表示]
たたらば珈琲の店主藤井さんご夫妻
たたらば珈琲の店主藤井さんご夫妻
(出所:たたらば珈琲)
[画像のクリックで拡大表示]

 有名なUber Eatsなど大手企業による同様のサービスがあるのに、なぜIBAR EATSを立ち上げたのか――。キーマンである藤井茂男さんに聞いた。

 藤井さんは、茨木市で自家焙煎のカフェ「たたらば珈琲」を経営している。藤井さんによると、新型コロナウイルスの影響でデリバリーとテークアウトのニーズが高まっているが、茨木市は大手のサービス範囲に入っていない。店側は、そのようなサービスをしたいが、店頭のお知らせや各自のソーシャルメディア、店のホームページで宣伝するしかできない。また人手不足でデリバリーができない店も多い。

 そうした中で、藤井さんと有志数人は、茨木の人々と飲食店をつないで茨木の食を応援するとの思いから、IBAR EATSをつくり上げた。まだ始まったばかりで試行錯誤もあるが、茨木市では大きな反響を呼んでおり、注文が相次いでいるという。地域の人がつくった地域密着型のサービスが地域の人々に愛用されていると感じているという。

 IBAR EATSの誕生は偶然ではない。それは、藤井さんが仕掛けた「日替わり店主BAR」と密に関連している。