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 コロナ禍という特別な時期に、前回前々回は、飲食業を救うイノベーティブな活動から学ぶことについて書いた。飲食業はきっと元気に回復すると信じているが、食の世界はこれからどう変わるのか、気になるところだ。過去・現在・未来の社会は、大まかには消費社会・情報社会・創造社会と区別できるといわれる。食の世界の変化は実に社会の発展と密につながっている。我々にとって毎日欠かせない食も、大きくは「飢食」「飽食」「創食」と時代とともに変化してきている。今回は、過去を振り返りながら、ラーメンに焦点を当て、食・社会・テクノロジーの変革について考察する。

「飢食」「飽食」「創食」とは

 過去・現在・未来のとらえ方にはいろいろな見方がある。その中の1つは、人々が物を買って消費する時代から社会へ情報を発信する時代へ、つまり、人々が受信者である「消費社会」から発信者となった「情報社会」への変化である。さらに、情報社会の後に来るのはどのような時代だろうか。日本でいうと経済発展と社会的課題の解決を両立する「Society 5.0」、世界的には、持続可能な発展を目標とする「SDGs(Sustainable Development Goals)」が注目されている。どれも、新しいスタイルの社会を目指す「創造社会」への変革の時代を迎えているといえる。現在はまさに情報社会から創造社会への変革が始まったところだ。

 社会の縮図である食も、この3つの時代においてはそれぞれの特徴を持っている。

過去・現在・未来の食の特徴
過去・現在・未来の食の特徴
過去の飢食、現在の飽食から、未来は創食の時代になる。(出所:筆者)

消費社会と飢食:
 飢食は、造語だ。飢(き)とは生命を保つに足りる食物がないことだ。近代においては、産業革命で進んだ機械化が生産を拡大する一方、2回の世界大戦やスペイン風邪などのパンデミック、大地震などの自然災害などが多かった。十分な栄養が取れない、飢食の時代といえる。

情報社会と飽食:
 1970年の「大阪万博」から、大量生産・大量消費の高度成長に伴い、物が満ちた時代に入った。1980年代から、メディアの発達、特にインターネットの登場とIT技術の進化で情報社会が訪れた。食の世界は、情報社会とともに、情報が先行してファッションのように新しい味を求めて、腹いっぱいに食べる、食べ物に不足のない時代となった。

創造社会と創食:
 近年、AI(人工知能)とIoT(Internet of Things)、ロボティクスなどの先進技術による社会のデジタル革新が加速している。食の世界も自動化、代替肉、レシピのソフトウエア化といったフードテックやスマートキッチンの流れが始まった。また、飽食の時代から顕在化している食品ロス、栄養失調や環境問題に対しても、人々の想像・創造力によって、食の社会課題を解決し、食の価値を創造する意識が高まった。

 以下、ラーメンを例として、消費社会/飢食、情報社会/飽食、創造社会/創食のイメージをより明確にする。