工場、建設現場、オフィスなど、さまざまな現場での自動化が進んでいる。古くは工場の機械化、新しいところでは人間が行ってきた業務の人工知能(AI)による代替まで、人件費がかかる人間の作業が機械やソフトウエアに置き換えられている。下図の「自動化を進める理由」としては、「人手不足の解消」が多く、背景に世界的な人件費の高騰や、国内の人手不足があることが分かる。
ただし工場の自動化など、少なくない初期投資を必要とする領域においては、人件費の削減だけを目的とする自動化には厳しい目も向けられている。図1の出典は以下のように述べる1)。
大抵の企業は人件費の削減分を自動化設備の投資に回そうとする。その投資回収期間はせいぜい2.5~3年だ。それ以上になると費用対効果は見込めないと判断する企業が多いようである。中には、より厳しく「単なる人の置き換えなら1年で投資回収せよと現場に発破を掛けている」(ダイキン工業)という企業もあるほどだ。
移行措置としての無人・遠隔化
自動化に近いテーマとして、遠隔による無人化がある。作業を行うためのインテリジェンスを機械やソフトウエアに一任することはまだできないが、人間の労力や危険を低減するために、「遠隔にある人間のインテリジェンス」の下で作業を行うケースだ。
例えば、熊谷組と東京工業高等専門学校は、遠隔操作するオペレーターが建設機械の傾きや振動をリアルタイムで感じられる「無人化施工VR技術」を共同で開発(図2)。2020年度の現場での活用開始を目指している2)。
遠隔にいる人間が間違いなく作業するためには、現場の状況確認や作業指示が遅延なく行われなければならない。そのため、2020年に国内でサービス提供が開始される5G通信の用途としても、機械の遠隔操作は期待されている(図3)3)。完全自動に向けた移行措置として遠方にある人間のインテリジェンスを活用した施策を採るケースも増えそうだ。