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「新規事業を推進してほしい」と言われた時、あなたはどうしますか?

 人々のニーズに対してサービスが安定供給されるようになると飽きられてしまい、さらなる差異化を目指して新規事業を推進する機会が多くなった。そして、2020年、新型コロナウイルスという少なくても半世紀の間は経験したことのない環境変化によって、さらに既存事業の大規模な転換や新規事業を次々に生み出すような取り組みが必要になった。「withコロナ」「ニューノーマル」などの多くの言葉が生まれ、行動変容を促す中で、リモートワークや非接触に関するテクノロジーが新規事業として結実し、急速な事業成長を生み出している。

 こうした急成長する新規事業を生み出していくためはどうすれば良いのか。本企画では、新規事業を矢継ぎ早に生み育てることが必要になった現代において、どのように新規事業の検討を進めれば成功確度が上がるのかについて、2回にわたって解説する。

「VUCA時代」における事業づくりの定石とは?

 新規事業を新市場から考える場合、大きな変化に着目するのが定石だ。2021年においても、新型コロナウイルスの影響は引き続き大きく、再度の緊急事態宣言が発令され、行動制限を余儀なくされている。

 「VUCA時代」注)と呼ばれるような、新型コロナウイルスのみならず事業を営む環境が激変し、想定外の事象が発生する現代では、これまでの事業成功の鍵が変わるゲームチェンジが起こりやすく、新規事業のテーマを考えるハードルは実はそれほど高くない。その一方で、テーマが顕在化してから事業を考えるのでは遅く、変化が起こりやすそうな領域とテクノロジーにアンテナを立て、他社が気づく前に筋の良い事業を構築できるかどうかが問われる。スピードが鍵なのだ。

注)VUCAとは「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字をつなげた言葉。

 2回シリーズの1回目となる本記事では、「2050年カーボンニュートラル」を目指すという政府方針が掲げられたCO2(二酸化炭素)をテーマに、低炭素テクノロジーを生かした新規事業づくりの考え方を紹介する。

事業づくりの地図「カオスマップ」を作ろう

 さて、低炭素テクノロジーを生かした新しいビジネスの種は、どうすれば発見できるのだろうか。実は、テクノロジーのトレンドからビジネスの種を探すのに適した方法がある。それは、注目するテクノロジーをベースにしたカオスマップを作ることだ。

 カオスマップとは、ある特定のテーマに対して、細分化した事業領域と各事業領域で活動する企業を地図のように配置したものであり、新規事業の検討初期段階に、自社がどこで新規事業を推進すべきかを考える上で有効な手段である。カオスマップを作成するには、そのテクノロジーの概観を理解する必要がある。それには、注目するテクノロジーに関連するキーワードを押さえ、そのキーワードを足がかりにして調べる方法が早道だ。では、低炭素テクノロジーには、どのような関連キーワードがあるか。

 低炭素テクノロジーのトレンドを把握するために、日経BPの情報収集ツール「日経TechFind」で「低炭素」を検索すると、「EV」「省エネ」「再生可能エネルギー」「Liイオン2次電池」「ZEH」「HEV」「化石燃料」といった関連技術ワードが出てくる。例えばEV(電気自動車)に着目すると、低炭素テクノロジーの社会的背景や行政・規制の動きなどが効率的に把握できる。

 さらに、入力ワードを工夫すると、多面的に状況を捉えることができる。最近では、EVのようにCO2を排出しない技術と共に、排出したCO2を積極的に利用することで温暖化防止に貢献する技術への関心が高まっている。そこで、CO2の循環活用テクノロジーの概観を調べるために、「CO2 再利用 資源化」で検索すると「CCS」「貯留(貯蔵)」「人工光合成」といった関連キーワードが新たに浮かび上がってくる。

 これらのキーワードから、関連している幅広いビジネス最新情報、すなわち「どの企業が」「いつ」「どの企業と組んで」「何を」「どの程度の規模で」「やっているのか(やろうとしているのか)」などを調べるには、公開情報(ニュース、プレスリリース等)にあたることが一般的である。これら膨大な情報を調べようとすると、ウェブ検索サイトなどでキーワードをそれぞれ入力しつつ、いつのニュースなのか、どの企業の話なのかを全て読んで整理することが必要になり、時間との兼ね合いで調査範囲が限定的になってしまう。そこで、AI(人工知能)を活用した自然言語処理によって膨大なニュースを構造的に分析できる当社(ストックマーク)の「Astrategy(エーストラテジー)」で、先に上がったキーワードに合致するニュースを分析し、CO2の循環活用に関係するテーマや話題の多かった企業を整理したカオスマップを作成した(図1)。

図1 CO2循環活用カオスマップ
図1 CO2循環活用カオスマップ
(出所:ストックマーク)
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