カオスマップから違和感を見つける
このカオスマップは大きく3つのことを示している。(1)CO2循環活用ビジネスの事業区分、(2)各事業領域の関係性、(3)各事業領域に属する企業、の3つである。
このカオスマップを見て、あなたはどのような感想を持っただろうか。この領域に精通している方は「異なる事業区分で見てみたい」とか「あの企業がいない」あるいは「意外な企業が入っている」と思ったのではないだろうか。このカオスマップの詳しい活用方法は次回の記事で説明するが、このカオスマップだけで斬新な新規事業を作ることは難しい。
このカオスマップの目的は、新しいビジネスの種に効率的にたどり着くことである。あなたが違和感を持つのであれば、そこに何かしらの変化の可能性があり、変化があるということは事業機会が存在している可能性があるということだ。あなたおよびあなたが所属している組織に蓄積している知識・経験と実際の企業活動を比較することで、同じ情報を見ているのに、気づけるか、気づけないかは変わってくる。
ただ、違和感を見つけられなかった方も安心してほしい。このカオスマップをベースに日々の情報を追加していけば、違和感を見つけられるようになる。そのためにもある瞬間における地図が必要であり、地図を更新し続け、変化を分かりやすく感じられるようにすることが重要なのだ。
熱狂するアイデアをいち早く見つけ、具現化に注力
新規事業で難しいところは、事業アイデアの創出ではなく、アイデアの具現化である。アイデアの具現化に欠かせないのが、諦めずに実行し続ける意志力だ。多くの困難にぶつかり、折れそうになる心を支えてくれるのは、自分自身の情報分析から紡ぎ出した“熱狂するアイデア”に他ならない。その熱狂アイデアを効率よく見つけ、筋の良いストーリーに仕立てて組織を巻き込んでいくためにも、参入企業とテーマを区分する視点の両面をシームレスに発見・整理し、認知外の変化、すなわち違和感をつかむことが重要だ(図2)。
誰でも見られる公開情報と自社内にある非公開情報の組み合わせから自社にとって価値あるアイデアにたどり着き、熱狂するアイデアに育てるには、図2で示した7つの視点(知りたいこと)の情報分析が不可欠である。特に、企業の出現やテクノロジー(テーマ)の出現には注視すべきだが、先述の通り、時間との兼ね合いや自身の認知バイアス(思い込み)の問題により、新たな企業やテクノロジーを発見するのは難しい。
Astrategyは、企業名と主要なトピックをAIが自動で分類して推薦するようになっている。これを使うことで、図2の考え方に基づいた調査を効率的に進められる。その時に、1年前や半年前の状況と比較したり、他のテーマのカオスマップと比較したりすることで、より多くの違和感をつかむことができる。今回のカオスマップ作成においても、Astrategyにて、1年、半年、3カ月と期間を絞って、企業とテクノロジーの変化を分析している。
新規事業のプロフェッショナルたちは独自に頭の中で違和感の発見方法を構築し、斬新かつ筋の良い新規事業を生み出してきた。しかし、人が一人で処理できる情報量をはるかに超えた情報が飛び交い、変化の激しさから経験則の適用範囲も限定的になったVUCA時代では限界の部分もある。
そこで、情報収集や分類の時間をAIの力で最小化し、認知外の企業やテクノロジー等の情報が並ぶカオスマップを作るプロセスをあえて作ってほしい。その新規事業づくりにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)によって、あなたが熱狂するアイデアに早くたどり着き、世の中を激変させる急成長事業の具現化につなげてもらいたい。次回は、実際にカオスマップを活用した事業アイデアの創出方法を紹介する。