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 「月額定額料金で使い放題」といった従来のモノ売りとは異なる料金体系を訴求する「サブスクリプション(サブスク)」サービスが脚光を浴びている。だが、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やコンテンツなど一部の例外を除けば、実際に定着・成功しているサービスは少ない。

 日経TechFindは、企業とエキスパート(専門家)とのマッチングサービスを手がけるビザスクの協力を得て調査を実施し、従来のモノ売りからの脱皮が急務の製造業におけるサブスクの実態に迫った。そこから、サブスクサービス成功の秘訣を探る。

 調査を進めていくと、まず、サブスクは事業として簡単に成功するモデルではないことが見えてきた。今回の回答者は改革意識が強いとみられるが、それでもサブスクで成功したとする回答は2割に満たなかった。それから、成功するためのポイントは、「商材」「顧客接点」「事業の体制ないし会社としての理解」という3つに集約されることも見えてきた。これら3つのポイントについては以下で、経験者に尋ねて分析した結果を見ていく。

 今回の調査は2021年6月に2段階で実施した。第1段階として、ビザスクに登録する専門家のうち、製造業での新規事業/事業転換/ビジネス改革などの経験がある人185人にビジネス変革やサブスクへの意識について聞いた。第2段階として、このうちサブスクへの知見がある人28人に、具体的な取り組みの内容や自己評価などを聞いた

*ビザスクのデータベースに登録されたアドバイザーに対するアンケート調査を可能にする「エキスパートサーベイ」を利用した。

 第1段階の調査で、185人に「新規事業/事業転換/ビジネス改革への意識の強さ」を5段階で聞いたところ、「とても強い」が61%を占めた。今回の調査の回答者は、改革意識が強い企業・人が多いと言えるだろう。

 同じ185人に「新規事業/事業転換/ビジネス改革を考えるうえで、サブスクリプションサービスモデルを意識するか(したか)」を5段階で聞いたところ、「はっきりと意識する/した」が52%を占めた。

Q:新規事業/事業転換/ビジネス改革を考えるうえで、サブスクモデルを意識するか(したか)(N=185)
Q:新規事業/事業転換/ビジネス改革を考えるうえで、サブスクモデルを意識するか(したか)(N=185)
(出所:ビザスク、日経TechFind)
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 「気になる/参考になるサブスクサービスのモデル」について複数回答で聞いたところ、「モノの販売後、常時監視してトラブルの可能性を通知したり、備品の追加・交換のアラートを出したりするアフターサービス型」(98人)が最も多く、「使いたいときだけ使えるオンデマンド型」(85人)が続いた。

Q:新規事業/事業転換/ビジネス改革を考えるときに、気になる/参考になるサブスクサービスのモデル
Q:新規事業/事業転換/ビジネス改革を考えるときに、気になる/参考になるサブスクサービスのモデル
(出所:ビザスク、日経TechFind)
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 「気になる/参考になるサブスクサービス事業で、最も注目するポイント」を聞いたところ、「サービス事業への転換」(46%)が最多だった。サブスクは、製造業においてサービス業への転換の切り札として意識されているようだ。

Q:気になる/参考になるサブスクサービス事業で、最も注目するポイントは(N=180)
Q:気になる/参考になるサブスクサービス事業で、最も注目するポイントは(N=180)
(出所:ビザスク、日経TechFind)
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サブスクサービスの成功は18%

 第2段階の調査で、サブスクへの知見がある人28人に「取り組んだサブスクサービスは成功/失敗のどちらだったと思われるか」と聞いたところ、「成功した」は18%、「失敗した」は7%で、「まだ取組途中のためわからない」が75%を占めた。現時点では成否を判断するのは早いと言えそうだ。

Q:取り組んだサブスクサービスは成功/失敗のどちらだったと思うか(N=28)
Q:取り組んだサブスクサービスは成功/失敗のどちらだったと思うか(N=28)
(出所:ビザスク、日経TechFind)
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 とはいえ、自由記入欄の記述などから、サブスク成功の秘訣や失敗するパターンとして見えてくることがある。