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カギは「信頼感」

 冒頭で紹介した「部下が元気かどうか分からない」という上司の不安も、パワハラ上司の指示は聞く気になれないという部下の悩みも、業務管理ツールやAIツールが解消してくれるようになるかもしれない。潜在需要は大きそうだ。

 もちろん、全体的に見れば、現状ではツールに対する拒否感が強い傾向にあるのは間違いない。センシングによって社員の行動を監視するだけのツールは、今後も到底受け入れられないだろう。今回の調査結果でも、こうした仕組みへの拒否感は強かった。例えば、「細かく行動を監視されると息抜きができず、かえってストレスがたまる」「バイタルデータを監視されていると、気にしすぎて体調が悪くなりそうに思える」「カメラで表情や服装、自宅の様子などプライベートも含めてずっと監視されるようで嫌だ」といった意見である。また、効果を疑う意見も相次いだ。「作業時間や場所で仕事ぶりを計測しても生産性向上につながらない」「PCの前にいることが仕事ではない」「自主性・創造性に逆効果」「監視されていることで会社や上司に信頼・信用されていないと感じる」といったコメントである。

 テレワーク支援ビジネス成功のカギは、こうしたメリットとデメリットのギャップを埋めるサービスづくり、イメージづくりだ。今回の調査結果から明らかなように、仕事の現場で望まれているのは監視ツールではなく、部下の健康状態の異変を察知したり、上司への相談や上司との関係をサポートしたりしてくれるツールである。これを実現するうえで、AIによるデータ分析は役立つだろう。

 重要なのはAIへの「信頼」。今回の調査では、「AIを信頼・信用していない」「ブラックボックスであるAIより人間の方が良い」「AIの判断基準によって不当な評価をされる可能性がある」といった、AIに対する不信からの否定的なコメントが多く見られた。信頼の醸成がAI活用のカギを握ることになりそうだ。ユーザーが嫌悪感を持つことなく必要なデータだけを効率よく取得するフレンドリーなUX(ユーザーエクスペリエンス)の設計も必要である。

若手に「今の会社で働き続けたい」と思わせるには

 最後に、“テレワーク時代”においても、若手社員が「今の会社でこのまま働き続けたい」と思える会社について調べた。

 テレワークはコロナ禍後も続く可能性が出てきている。こうなると、特に勤続年数の短い若手社員は会社への帰属意識が薄れやすく、転職を考える人が増える可能性がある。転職活動も、業務時間の合間を縫って行いやすくなる。では、30代以下で「今後も今の会社で働きつづけたい」と考えている層の特徴は何だろうか。

 今回の調査・分析によって、次のような属性が浮かび上がってきた。

  • 在宅勤務が全社的に導入されており、現在の在宅勤務の状況に満足している
  • コロナ収束後は必要に応じて在宅と出勤を使い分けることを希望している
  • この1年での仕事上の良い変化は、コミュニケーションと仕事の効率性向上
  • PCやITツール(ソフトウエアやサービス)が得意である

 テレワークをうまく運用し続けられるかどうかが、若手社員の定着率を左右することになりそうだ。

 そのためには、テレワークでも社員同士が信頼し合えるコミュニケーション環境の構築が重要になる。例えば、業務とは直接関係のない気軽な対話のできる場をオンラインで設けることで、「最近調子どう?」などと部下に声を掛けたり、先輩社員に悩み事を相談したりできる環境を整える。コニカミノルタジャパンやぐるなび、キリンホールディングス、ベンチャー企業のヌーラボ(福岡市)などは既にこうした仕組みを取り入れている。

 今回の調査では、テレワークでの重要なコミュニケーションツールであるオンライン会議への不満も、若手社員の間には特に多いことが分かった。音質や通信に起因する不満に加え、「目線が合わない」という不満が多い。「対面だと分かる目の動きや声色などがテレビ会議では分かりにくい」という課題も、オンライン会議ではよく指摘されるところだ、こうした課題を解決する技術として、リアルタイム映像や音声伝送、VRアバター会議、表示領域にカメラを埋め込んだディスプレーなどが提案されている。今後の注目株になりそうだ。

Q:オンライン会議システムを利用する中で不満に感じていることはありますか(いくつでも)(N=2788)
Q:オンライン会議システムを利用する中で不満に感じていることはありますか(いくつでも)(N=2788)
(出所:日経リサーチ、日経TechFind)
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Q:オンライン会議システムへの不満を、年齢層別に分析
Q:オンライン会議システムへの不満を、年齢層別に分析
年齢層の特徴が強く表れている箇所を黄色で示した。逆に、他の年齢層に比べて弱い傾向にある箇所を青色で示した(出所:日経リサーチ、日経TechFind)
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