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産業領域(B2B)における5G(第5世代移動通信システム)活用の有効性については随所で問われるが、マッキンゼー日本支社のグルンディン氏は、「5Gはビジネス向けのテクノロジー」と言い切る。企業や産業界に対しては、5Gを契機とした輸出経済の拡大に期待するグルンディン氏は、日本が世界に対して強みを発揮できる、ある技術領域に注目しているという。(聞き手は菊池 隆裕=日経BP 総合研究所)

マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社 パートナーのグスタフ・グルンディン氏
マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社 パートナーのグスタフ・グルンディン氏
(撮影:菊池 くらげ)
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3G時代にはモバイルインターネットの礎ができ、4G時代にはシェアリングエコノミー、動画共有サービスが普及しました。5Gが普及した世界には、どのような変化が予測できるでしょうか?

 3Gや4Gでも同様の予測をしてきましたが、過去からの主な教訓は「予測自体は間違っていなかった」。しかし、「本当の変化は、想像もできないところからやってきた」ということです。例を挙げるなら、3Gのときには、モバイル端末やインターネットの活用は予測できたものの、スマートフォン自体の登場やアプリの隆盛は想像もしていなかったということです。4Gにおいても、実際の効果が生まれたところは想像の限りではありませんでした。

 5Gとしても予測できることは自負していますが、実際には想像できないところから変化が起こりそうです。ただし、分かっていることもあります。技術観点で言えば、5Gには過去とは明らかに違う要素があるからであり、端的に言うなら「5Gはビジネス向けのテクノロジー」だということです。

 5Gの特徴を要約すると、多くの人が言うように「高速」「低遅延」「多接続」という3つの特徴があります。このうち重要なのは、低遅延と多接続。低遅延で言えば、ネットワーク中の遅延時間は人間の反射のスピードを上回ります。コンシューマー向けメリットはそれほど明確なものを打ち出せない一方、ネットワーク上で稼働するドローンやクルマでは必須になるでしょう。多接続で言えば、1つの基地局につながるデバイスは現在1000~2000であり、人間や自動車なら十分ですが、すべてのたばこや飲料缶につけようとしたら十分ではありません。それが5Gでは可能になります。これが、5Gはビジネス向けのテクノロジーという理由になります。

 「5Gによる変化」に関する質問に戻りましょう。

 「5GのグローバルGDPに対する貢献」に関するマッキンゼーの予測があります。総額2兆~3兆米ドルにも上る貢献を業種別に示したもので、ユースケースとしてはメンテナンスおよびスケジューリングの推測、遠隔患者診断、自動運転などが挙げられます。製造業、小売り、農業の貢献が高いことが分かります()。

図 産業別の5GのグローバルGDPへの貢献予測
図 産業別の5GのグローバルGDPへの貢献予測
社会的価値に加え、5GのグローバルGDPへの貢献は、他の技術を含め、2030年までに2兆~3兆米ドルとなる見込み(出所:McKinsey & Company)
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 この予測は世界規模でのものですが、日本ではどうでしょうか。意外かもしれませんが、日本では農業の貢献度合いが大きいとみています。なぜなら、アジア他国に比べて農業の近代化が進んでいるからです。ヘルスケアも同様に大きいとみています。

 経済への貢献を考えるときに重要なのは、国内市場向けだけでなく輸出経済にも視野を広げることです。各業界においてリーダーを担う企業が世界中に価値提供を輸出していくことが、経済への貢献を考える上で重要なことです。