空を飛ぶばかりがドローンではない。近年盛り上がりを見せるのが、水中ドローンの市場だ。従来、ダムや桟橋といったインフラの水中部の点検は潜水士が目視するしかなく、手薄になりがちだった。水中ドローンは、この難題を解決する。
ベンチャー企業のフルデプス(東京・台東)が独自に開発した「DiveUnit300(ダイブユニット300)」は、300mの深さまで潜れる水中ドローンだ。機体は幅41cm、奥行き64cm、高さ38cmで、重さは約28kg。前面にカメラを備えて水中を自在に動く。1度の充電で4時間にわたって調査できる。
撮影した映像は、機体から水上で待機する船に最長1.5kmの光ファイバーを通じてリアルタイムに伝送する。さらに、同社が開発したクラウドシステムを使って遠隔地の事務所のパソコンでも映像をチェックできる。これまで沖縄県内のダムの点検をはじめ、50件を超える実証試験を実施。2019年4月には3億4000万円の資金調達を決め、量産に着手した。
水中ドローンが稼働する現場には、空とは全く異なる過酷さがある。その最たるものが水の濁りだ。フルデプスの伊藤昌平社長は、「ダムの濁った水の中などでは、わずか数メートル先が見えないことがある」と説明する。潜水士が潜っても視界がほとんど確保できず、点検する場所を探すところから始めなければならない。