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 手掛ける食品が様々なように、食品メーカーの働き方改革は多種多様だ。日清食品ホールディングスは現場の意見を素早く吸収し、IT環境を迅速に整備。働きやすいオフィス作りを進めている。

 2019年度中に社員1人当たりの年間総労働時間を2000時間未満にする――。2017年度にこの目標を掲げて働き方改革を進めた結果、1年前倒しで目標を達成できた食品メーカーがある。即席麺やチルド食品などを手掛ける日清食品グループだ。2018年度には1人あたりの年間総労働時間を前年度に比べて約84時間削減し、1985時間に短縮。1日の就業時間7時間40分に換算すると年間で約11日分、営業日ベースで約半月分もの労働時間を減らしたことになる。

 年間の総労働時間を2000時間未満に抑えるには、日々の仕事を残業なしで進めたうえで、年次有給休暇を10日取得しないと達成は難しい。日清食品グループは残業の抑制をはじめとする働き方改革を進めたことでこの目標を達成できた。年次有給休暇についても、割り当てられた日数の9割取得を目標に掲げ、促進を進めた。年次有給休暇が20日ある社員は18日の有休を取得しなければならない。社員全体の96%がこの目標を達成し、労働時間削減の成果を得た。

 一連の目標達成のため、日清食品グループは働き方改革を進める上で目標管理制度を導入した。現場のチームごとに残業時間の削減や年次有給休暇の取得に関する目標を掲げて実践。目標を達成すると、給与の手当として社員に残業代を還元するインセンティブ施策を期間限定で実施し、目標の前倒し達成を果たした。このほかグループ全体の施策として、ノートパソコンやスマートフォンを使ってオフィス以外で働くテレワークの普及も図っている。

現場主導でボトムアップの「B面プロジェクト」

 日清食品グループの働き方改革の特徴の1つが現場のかかわりだ。「残業時間の削減やテレワークの普及といった全社規模でのトップダウン施策に加えて、現場が主導するボトムアップの働き方改革を、楽しくスピーディーに進めている」と日清食品ホールディングス人事部の段村典子プロジェクトリーダーは説明する。

 日清食品ホールディングスはボトムアップの働き方改革プロジェクトを「B面プロジェクト」と呼んでいる。トップダウン施策をアナログレコードなどのA面とみなし、その対をなすプロジェクトであることを示すため、B面プロジェクトと名付けた。

 具体的には2017年に入って、総務や人事、財務、情報企画といった日清食品ホールディングスの管理部門が連携して、日々の仕事を効率化する施策を講じていった。年に数回、業務部門の各職場にアンケートをして、仕事の効率化に関する意見を集めた。例えば「会議室の予約がなかなか取れない」という意見に対しては、日清食品ホールディングスのオフィスにフリースペースを増やす、といったオフィス改革に乗り出した。

大幅にリニューアルした日清食品ホールディングスの本社オフィスの様子。打ち合わせができる様々なエリアを設けている。外光の明るさやカウンターが印象的なエリアや、立ち会議に向くエリアなど種類が多彩だ
大幅にリニューアルした日清食品ホールディングスの本社オフィスの様子。打ち合わせができる様々なエリアを設けている。外光の明るさやカウンターが印象的なエリアや、立ち会議に向くエリアなど種類が多彩だ
(出所:日清食品ホールディングス)
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 オフィス改革は打ち合わせができるスペースを増やすだけにとどめていない。東京・新宿の本社オフィスの一部を大幅にリニューアル。「クリエイティブ」「オープン」「集中しやすい」といったコンセプトを掲げて、社員が取り組む仕事に合わせて執務をする場所を自由に選べる空間作りを進めて、2018年3月に完成した。