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多様化推進の一策に働き方改革

 2014年以降、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方ができるようにするため、人事制度やテレワーク制度を整えてきた。人事制度については、午前10時以前の始業時間や午後3時以降の終業時間を社員が自由に決めて働けるフレックスタイム制度や、仕事を始める時間を必要に応じて前倒しできる「朝方弾力勤務」と呼ぶ制度を整えた。

 JTが多様化を推進している背景には、130以上の国や地域で事業を展開しているといった事情がある。1999年以降、M&A(合併・買収)によって相次いで海外のたばこメーカーが同社グループに加わった。JT単体の社員数は7000人ほどだが、海外事業に関わる社員は4万人を超える。海外と連携して事業を進めるケースも増えてきた。

 一方で、従来の紙巻きたばこに加えて、電子たばこや加熱式たばこといった新分野の製品が広がりつつある。「たばこや食品の分野で新規参入する企業も出てきており、競争が激しくなっている。そうした中でも、JTグループが持続的に成長するには新しいアイデアや取り組みが不可欠だ。それには社員1人ひとりの多様性を認めて、生き生きと働ける環境や組織の風土作りが重要であることを経営課題と見なし、実現に向けて取り組んできた」とJTの多田羅秀誠人事部次長は説明する。

eラーニングでLGBTの理解促進

 同社は多様性に関する施策をここ数年、より進歩させている。2016年ごろから、LGBTの人たちの価値観を重んじる意識改革にも取り組んでいる。

 LGBTの人たちを理解し、尊重する機運は国内でも高まりつつある。東京都では東京オリンピック・パラリンピックの開催に先立って、2018年10月に人権を尊重する条例が成立した。都はこの条例に、自身の性別についての認識である「性自認」や、恋愛などの対象に関する「性的指向」による差別をなくすことや、性自認や性的指向などについての啓発を進めていくことを盛り込んでいる。「いかなる差別も許されない」というオリンピック憲章の理念をより一層、都民に浸透させるのが狙いだ。

 こうした条例が成立した背景には、自身が本来認識している性を、周囲が受け入れてくれないなどの理由で、LGBTの人たちがストレスを感じたり、偏見や差別に苦しんだりしていることがある。

 JTも、LGBTの社員がこうしたストレスや苦しみを感じずに、日々の仕事に取り組めるようにすることを目指している。何気ない職場での会話がLGBTの社員を傷つけたり悩ませたりしてしまう場合もある。そうなれば、その社員のモチベーションは下がり生き生きと働けず、高いパフォーマンスも出せない。

LGBTの情報を社内で発信している日本たばこ産業のイントラネットの画面
LGBTの情報を社内で発信している日本たばこ産業のイントラネットの画面
(出所:日本たばこ産業)
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 そうならないように「LGBTという個性を正しく理解して受け入れ、多様性を生かした組織運営ができるように会社として取り組む必要がある」と多田羅次長は説明する。具体的には、社内で多様化推進をテーマにしたセミナーや講演会を定期的に実施しているほか、イントラネットでセミナーの動画を公開したりしている。