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「データ活用の本質、データ流通の未来」をテーマに、日本を代表するCIO(最高情報責任者)やCDO(最高デジタル責任者)、有識者など約40人が議論した。日経BPが2019年9月25日に都内で開催した「日経 xTECH ITイノベーターズ会議」で飛び出した発言を紹介しよう。

 データ活用を阻む壁、特にデータ連携で壁になりがちなのが組織間の垣根だろう。だが、これを乗り越えた企業には大きな共通点がある。取り組みの目的が明確なことだ。決して「データを使って何かできないか」といった態度でデータ活用に挑んではいない。高いレベルのデータ連携に成功した企業の突破口を紹介する。

異なる事業のデータを使い、いちげん客の好みを当てる

ヤフー 執行役員 チーフデータオフィサー(CDO) 佐々木 潔 氏

 Web企業からデータの企業への転身を宣言しているヤフー。チーフデータオフィサー(CDO)を務める佐々木潔執行役員は社内のデータ活用事例を複数紹介した。中でもユニークな取り組みとして、異なるサービスで蓄積したデータを掛け合わせ、新たな分析結果を導き出す事例を話した。

 データを掛け合わせたサービスはEC(電子商取引)の「Yahoo!ショッピング」と検索サービス。従来、Yahoo!ショッピングでは「初めてYahoo!ショッピングに訪れたユーザー、もしくはたまにしか訪れないユーザーに対して、商品をレコメンド(推奨)することが難しかった」(佐々木執行役員)。Yahoo!ショッピングのサイト内に蓄積しているユーザーのデータが少ない場合は好みの商品を類推しにくかったからだ。

ヤフーの佐々木潔執行役員チーフデータオフィサー(CDO)
ヤフーの佐々木潔執行役員チーフデータオフィサー(CDO)
(撮影:井上 裕康、以下同じ)
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 そこで、「Yahoo!検索」のデータを掛け合わせることにした。Yahoo!ショッピングをたまにしか使わないユーザーでもYahoo!検索を日常的に利用している場合は多い。そこで、Yahoo!検索のデータを含めて顧客の属性を分析し、好みの商品を類推してレコメンドしたところ初回訪問時や利用回数が少ないユーザーのクリック率が4.5倍に向上したという。「予想以上の効果に驚いた」(佐々木執行役員)

 この事例の要点は「初めて訪れたユーザーに対しても適切にレコメンドしたい」という課題と目的が明確だったことにある。加えて、この事例はヤフーのサービス間でデータを掛け合わせたケースだったが、企業間でも応用可能だと佐々木執行役員は言う。「自社のデータ量だけでは分析できない企業があれば、ヤフーの所有するデータと掛け合わせて活用してもらいたい」(佐々木執行役員)。既に江崎グリコやJリーグ、三越伊勢丹などとデータ活用の協業を積極的に進めている。

取引先に在庫データを開示して販売機会の損失を抑制

トラスコ中山 取締役 情報システム本部長 数見 篤 氏

 機器工具卸のトラスコ中山の数見篤取締役情報システム本部長も、データ活用の目的を明確にする重要性を指摘した。「社内外の誰に利便性をもたらすのか、その点を明らかにしないといけない。さもないと『データ分析したけれど既に答えを知っている内容だった』といった無駄な労力になりかねない」と話す。

トラスコ中山の数見篤取締役情報システム本部長
トラスコ中山の数見篤取締役情報システム本部長
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 データ活用の目的を明らかにして成功した事例として、取引先へ在庫データを開示した取り組みを披露した。従来は在庫データを自社だけで閲覧していたが、特定の得意先とAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)やEDI(電子データ交換)などを通じてリアルタイムもしくは適時にデータ連携できるようにした。すると得意先はトラスコの在庫を自社の在庫と同ようにECサイト上で公開しビジネスに生かせるようになった。トラスコ中山にとっても機会損失の抑制につながり「データを開示したお客様からのビジネスが拡大した」(数見取締役)。

 データ活用によってメリットを得るのは誰か、そのメリットによって自社にどんな恩恵があるのか。これらがはっきりしている事例は成功しやすい。