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 中には目標を決めるだけの者もいたが、全体としては「目に見えて力が伸びた若手が多かった」とWさんは振り返る。入社6年目の先輩社員を目標に据えた3年目の若手が、1年後には先輩とほぼ同レベルの力を付ける、といったこともあったという。

 実は、この指導方法の原点は、Wさん自身の経験にある。Wさんが入社2年目に配属された部署には、ベテランと呼べる社員が少なかった。そのため「仕事の内容や実力を把握できたのは、せいぜい5年上の先輩まで」(Wさん)。しかし「常に目標とする先輩を意識して仕事をできたので、今思えば自分の力を伸ばすうえで良い環境だった」(同)と話す。

チーム運営で自ら考えさせる

 もう1つの指導方法である「3人組のチーム編成」は、若手3人を1つの単位としてチームを組ませ、仕事の分担や指定した納期までのスケジュールをすべて自分たちで決めさせるというものだ。

 この指導方法の最大の目的は「チーム運営や意思決定を任せることで、自ら考え問題を解決する力を身に付けさせる」(同)こと。例えば、3人の中に仕事の遅い人がいて納期遅れの可能性が高まったら、どうすればその人の仕事が速くなるか、チームとしてどうフォローしたらよいかを議論させる。

 一見、Wさんが仕事のマネジメントをチームに任せて放置しているように思えるかもしれない。しかし、それは違う、とWさんは言う。「リーダー役を適宜アサインしてチーム運営を学ばせたり、議論の結果をホワイトボードに書いて意識をすり合わせることの大切さを教えた。もちろん、仕事の進み具合を見ながら、こまめにアドバイスを与えた」。

 この指導方法も、「入社2年目にして、一度に新入社員3人の指導を任される」というWさん自身の経験から考えついたものだ。「当時は自分の仕事をこなすのに精一杯で、きめ細かな指導を行うことなど無理だった」(同)。苦肉の策が、3人を1チームとして指導することだったのである。

 翌年以降もチーム編成による指導を続けた結果、(1)チームの人数が4人以上、(2)年次の差が3年以上、(3)メンバーの能力格差が大きい、といったケースでは、チームがうまく機能しないことが分かった。(2)と(3)は、メンバーが他人に依存しやすいからである。

 3人組のチーム編成は決して万能ではないが、うまく行ったときの成果は目覚ましいものがあるという。自主的に勉強会を開いて技術を教え合ったり、お互いの仕事のやり方について突っ込んだ議論をする、といったことを行うようになるからだ。Wさんはこの指導方法の本質を、「若手同士の相互指導を促す仕掛け」と分析している。