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台風19号の影響で70棟以上が浸水した岩手県山田町の田の浜地区では、東日本大震災後に津波を防ぐために整備した緑地公園の堤防が被害を拡大した。住宅地の背後の山から流れてきた雨水や土砂をせき止め、排水の障害になったとみられる。
津波という外水被害を防ぐ堤防が、雨水という内水被害を助長した可能性がある。町は浸水の経緯や堤防の排水状況などの調査を進めている。
田の浜地区は、震災で327棟が全壊や大規模半壊の被害を受け、死者や行方不明者が117人に上った。震災後、町は被害の大きかった海側の低地を災害危険区域に指定。住宅の高台移転を促した。跡地には、国の復興交付金を使って津波防災緑地公園を整備。2018年5月に工事を終えた。
津波防災緑地公園は、県が海岸沿いに建設を進めている海抜(東京湾平均海面TP)12.8mの防潮堤と、震災で壊滅的な被害を免れた高台の既存住宅地との間にある。背後に山が迫る住宅地の海側の約2.8haに、約8万5000m3の盛り土を実施。海抜16m、延長約400mの堤防を築いた。
堤防を緑化し、遊歩道や広場を整備。平時は公園として利用できるようにした。一方、津波襲来時には、県の防潮堤と合わせて多重防御の役割を果たすよう計画されている。