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 2018年の西日本豪雨と比べて3倍以上に及ぶ71の河川が決壊するなど、関東・甲信から東北にかけて広範囲に被害を及ぼした台風19号。大規模な浸水被害をもたらす大雨だった割には、土砂災害の件数はそれほど多くないことが明らかになってきた。

国土交通省が10月21日午前6時に公表した土砂災害の発生件数を基に日経コンストラクションが作成。青線は台風19号の進路
国土交通省が10月21日午前6時に公表した土砂災害の発生件数を基に日経コンストラクションが作成。青線は台風19号の進路
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 国土交通省によると、台風19号による土砂災害発生件数は10月24日の午前8時30分の時点で590件だ。発災から2週間しかたっておらず、浸水の影響で土砂災害の調査が出遅れているため、増える可能性はある。それでも2500件超で土砂災害が生じた西日本豪雨と比べると、4分の1程度の数だ。

 17年までの10年間における1年当たりの土砂災害平均発生件数が1106件だったことを考えると、西日本豪雨が突出していたともいえる。ただし台風19号も神奈川県箱根町で総降水量約1000mmを記録するなど、東日本を中心に17地点で500mmを超えており、観測史上1位を記録した観測所も少なくなかった。

台風19号で、既往最大の24時間降水量を更新した地点のうち、更新比率の高いものから順に掲載。10月12日、13日の更新値(資料:気象庁)
台風19号で、既往最大の24時間降水量を更新した地点のうち、更新比率の高いものから順に掲載。10月12日、13日の更新値(資料:気象庁)
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大雨特別警報を5県に発表した10月12日午後8時ごろの土砂災害の危険度分布。東日本の広範囲で「極めて危険」を意味する紫色を示していた(資料:気象庁)
大雨特別警報を5県に発表した10月12日午後8時ごろの土砂災害の危険度分布。東日本の広範囲で「極めて危険」を意味する紫色を示していた(資料:気象庁)
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 「一般に既往最大値を更新する雨が降ると、地下水位が上昇し斜面が崩れやすくなる」。こう説明するのは、京都大学大学院農学研究科の小杉賢一朗教授だ。斜面の土壌に雨水が蓄えられるものの、降雨量が多くなると地下水位が上がり土壌は飽和状態になる。その点では、関東・東北で土砂災害が多発してもおかしくない状態だった。

 土砂災害の形態でも、西日本豪雨との違いが見られた。例えば、西日本豪雨で多発した「土砂・洪水氾濫」は、台風19号であまり生じていない。豪雨により上流域から流出した多量の土砂が下流の河道で堆積することで、河床上昇・河道閉塞が引き起こされ、土砂と泥水の氾濫が発生する現象だ。

 土砂・洪水氾濫が起こると、土砂とともに上流域から流木が流れ出て被害が拡大するケースも多い。西日本豪雨以外にも、13年の伊豆大島土砂災害や17年の九州北部豪雨など、近年は比較的同様の被害が目立つ。その点、台風19号では流木を巻き込むような被害は今のところ、それほど報告されていない。

2018年の西日本豪雨では各地で土砂・洪水氾濫が目立った。写真は広島県坂町小屋浦地区。天地川の支流(写真手前)で土石流が発生し、写真中央辺りを右から左に向かって流れる天地川に合流したもよう(写真:日経コンストラクション)
2018年の西日本豪雨では各地で土砂・洪水氾濫が目立った。写真は広島県坂町小屋浦地区。天地川の支流(写真手前)で土石流が発生し、写真中央辺りを右から左に向かって流れる天地川に合流したもよう(写真:日経コンストラクション)
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