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日中は起業したIT企業の役員を務め、早朝に純文学を書く「クロステックな作家」上田岳弘氏が「アート&テック」をテーマにアーティストやテクノロジストと語り合う。今回の対談相手はイスラエル出身の起業家、ニール・ヒンディ氏。ヒンディ氏のThe Artianは企業がアートの力をビジネスに取り入れる活動を支援する。ヒンディ氏は次の問題を提起する。「社会は一方を強制する。右脳か左脳か、クリエイティビティーか分析か、美術かエンジニアリングか。両方はできないと言われて育った」 (構成=谷島 宣之、通訳=大石 有美、長谷川 雅彬)

(写真:新関 雅士)
(写真:新関 雅士)
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上田: ビジネスとアートのコラボレーションに関する対談、今回はイスラエル生まれで今、スペインで活躍されている起業家のヒンディさんがゲストです。

ヒンディ: ありがとうございます。上田さんは作家とIT企業の役員という2つのことを同時にやっていらっしゃるのですよね。私たちは似ているところがあると思いますよ。

上田: 世界で新型コロナウイルスがまん延しています。スペインの状況、そしてヒンディさんのビジネスの現状はいかがでしょうか。

ヒンディ: 実はある段階から日々のニュースにはあえて接しないようにしてきました。ネガティブになってしまうので。厳しい状況ですし、経済再開に伴い、第2波が来るのではないかと懸念されています。

 経済が再開する前まで私に限ったことではないですがビジネスに大きな影響を受けました。私は世界各地をまわって講演をしたり、アートの良い点をビジネスに結びつけるワークショップを開催したりしてきましたが、オンラインに移行せざるを得ませんでした。言うまでもありませんが海外出張やイベント開催などについて様々な制約が生まれたからです。ただし、不確実な状況とはいえ、私も含め、アントレプレナーシップのある人はオプティミストであり続けていると思います。

Nir Hindi(ニール・ヒンディ)
Nir Hindi(ニール・ヒンディ)
イスラエル テルアビブ出身の起業家。アートの世界の実践やプロセス、テクニックに基づき、イノベーションと創造性に関するトレーニングを提供するThe Artianの創業者。前スペイン国王フアン・カルロス1世によって設立された、スペインでイノベーションを促進する組織「コテック」の100人のエキスパートの1人。マドリードにあるIEビジネススクールの客員教授、デザインスクールIstituto Europeo di Designの客員講師。著書に『世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること』(長谷川雅彬監訳、小巻靖子訳、クロスメディア・パブリッシング)がある。(写真:新関 雅士)
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上田: ビジネスが通常のようにできない間、どう過ごされていましたか。

ヒンディ: おそらく今回、非生産的になった方もいれば、すごく生産的になった方もいるでしょう。私の場合、生産的な機会になりました。従来の外向けの仕事はできませんでしたが。その代わり仕事においてもプライベートでも内向きの活動を充実させました。

 仕事についていうと、これを機に自分の仕事を見直しました。新型コロナウイルスが広がった今の状況下で人々は何を求めているのか。私は誰をターゲットにすべきか。自社の企業価値をどう再構築するのか、といったことをじっくり考えました。それを受けて新しいコンテンツを色々つくりました。「Shaping Business Minds Through Art」というタイトルのポッドキャストを始めたり、Webサイトを刷新したり、オンラインで参加できる新しいトレーニングプログラムを作ったりしました。

上田: ご自分のビジネスを再構築するにあたってどのようなことを考えましたか。

上田岳弘(うえだ・たかひろ)
上田岳弘(うえだ・たかひろ)
1979年兵庫県生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、IT企業の創業に参画し、現在は役員を務める。2013年『太陽』で第45回新潮新人賞を受賞しデビュー。2015年『私の恋人』で第28回三島由紀夫賞、2018年『塔と重力』で第68回芸術選奨文部科学大臣新人賞、2019年『ニムロッド』で第160回芥川龍之介賞を受賞。著書に『太陽・惑星』『私の恋人』『異郷の友人』『塔と重力』『ニムロッド』『キュー』がある。(写真::新関 雅士)
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