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早朝に純文学を書き、日中は起業したIT企業の役員を務める “クロステックな作家”上田岳弘氏が「アート&テック」をテーマにアーティストやテクノロジストと語り合う。今回の対談相手は世界のトップ美術館であり、都市・地方変革の成功例としても有名なビルバオ・グッゲンハイム美術館(the Guggenheim Museum Bilbao)でキュレーターを務めるマヌエル・シラウキ氏。欧州委員会が先導するプロジェクトS+T+ARTSにもかかわるなど欧州で最も重要なキュレーターの1人であるシラウキ氏は「テクノロジーによって、まだ名前が付いていない、新しいコンセプトのアートが出てくる」と指摘する。(構成=谷島 宣之、通訳=長谷川 雅彬、大石 有美)

上田: 僕は純文学と呼ばれる芸術性に重きを置いた小説を朝に書き、昼間は友人と起業したIT企業で働いています。今日はアートとテクノロジーについてお話しできればと思います。あえてテーマを決めず、フリーセッションのようにあれこれ話をしましょう。そこから何か生まれるものがある、と考えています。

 まずシラウキさんがキュレーターをされているビルバオ・グッゲンハイム美術館についてご紹介いただけますか。

シラウキ: 対話の機会をつくっていただき、ありがとうございます。グッゲンハイム美術館は世界に複数あります。もともとは米国のニューヨーク、そしてイタリアのベニスにあり、世界に広がっていきました。

Manuel Cirauqui(マヌエル・シラウキ)
Manuel Cirauqui(マヌエル・シラウキ)
現代アート、デザイン戦略、実験アカデミアの交差する場所で活動するキュレーター、作家。スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館でキュレーターを務める。バルセロナ自治大学にあるシンクタンクEina/Ideaの創立者兼ディレクター。欧州委員会が先導するプロジェクトS+T+ARTSのキュレーターも兼ねる。ビルバオ・グッゲンハイム美術館のSoto. The Fourth Dimension(2019)、Art and Space(2017)などの展示やFilm & Videoプログラムを監修。メキシコMuseo Tamayoや米Dia Art Foundationの国際アートプロジェクトを手掛けた。
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 世界のグッゲンハイム美術館の中でもスペインのビルバオにあるグッゲンハイム美術館はユニークな存在です。ビルバオ・グッゲンハイム美術館自身のプログラミングガイドラインがあり、それに沿って動いています。

 1990年代に空港、地下鉄といった交通インフラを含め、河口や産業用地の整備など、ビルバオの都市全体をトランスフォームするプロジェクトが始まりました。単につくり直すのではなく、ビルバオの地形、文化、社会の特徴を分析し、それを反映したマスタープランを立てました。1997年に開所したビルバオ・グッゲンハイム美術館は当時から今日に至るまでビルバオの国際的なアイコン、町のシンボルとなっています。

注:ビルバオのトランスフォームにおいては河川の再生、遊歩道・自転車道、公園、国際会議場の設置などが並行して進められた。都市再生計画における成功例として知られている。

ビルバオ・グッゲンハイム美術館の全景
ビルバオ・グッゲンハイム美術館の全景
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