設計や施工でそれぞれ進んできたCIMを連携させ、事業プロセス全体を効率化する取り組みが始まった。国土交通省は2019年3月、全国で12のモデル事業を選定。3次元データの一気通貫に向けた課題などを洗い出す。
ECIで施工を見据えた3次元設計
国道2号大樋橋西高架橋
設計から施工へ、3次元データをいかに引き継ぐか──。一気通貫で3次元データを活用しようとする場合に、大きな壁となるのが各段階のデータ連携だ。
設計、施工それぞれの段階でCIM導入は進んでいるものの、多くはその中だけで完結している。せっかく属性情報を含む3次元データ(CIMモデル)を作製しても、次の段階で生かされない。
こうした現状を打開する取り組みが、2019年3月に国土交通省の「3次元情報活用モデル事業」に選定された国道2号大樋橋西高架橋の整備事業だ。ポイントは、同事業に採用したECI方式にある。これは、施工者となる予定の会社(優先交渉権者)に設計段階で技術協力業務を発注し、施工のノウハウなどを設計に反映させる方式のこと。設計段階で建設会社が関与するので、CIMモデルを施工者が使いやすい形に整備できる。
施工で使えるブロック割に
大樋橋西高架橋は、岡山市内を通る国道2号の大樋橋西交差点を立体化する陸橋だ(図1)。現在、この交差点は片側3車線で、1日10万台の交通量がある。交通への影響を最小限にして橋を架設するには、施工を考慮した設計が必要だった。
国土交通省中国地方整備局が16年9月に、詳細設計業務を大日本コンサルタントに発注。その半年後の17年3月、優先交渉権者に選定した日本ファブテック・鴻池組JVと、技術協力業務の契約を締結した。設計は19年3月に終わり、今後、同JVとの協議が整い次第、施工契約を結ぶ。
同JVの意見を踏まえ、CIMモデルを施工段階で使える形にした一例が、橋桁のブロック割だ。設計者は通常、桁全体を1つのブロックとしてモデル化する。しかし、クレーンで架設する鋼橋の場合、架設するブロックごとに分割したCIMモデルでないと施工計画に使えない。
「施工を見据えてCIMモデルを作ってもらったので、今後、施工でも利用できるはずだ」と、日本ファブテック技術研究所の田中伸也・ICT推進グループ長は期待する。
設計段階のCIMでは通常、図面がある程度出来上がってから3次元化する。だが、この事業では詳細度を粗くして、初期段階から3次元モデルを作製するようにした。
「3次元モデルで施工手順を作って情報共有したので、早い段階で課題が明確になった」と、大日本コンサルタント大阪支社技術部の松尾聡一郎・構造保全第一計画室長は話す。「非現実的な提案がなくなり、無駄な検討作業を防げた」(松尾室長)
今後のCIM事業拡大に向け、属性情報の付与や数量算出など、複数のテーマについて検証し、CIM導入の効果と課題も取りまとめた(図2)。例えば、国交省の目指す3次元モデルの契約図書化がどこまで可能なのか、といったことを調べた。