全1662文字
PR

 CIM導入事業はどこでどのくらい実施されているのか、どんな分野の企業が積極的なのか、CIMの導入費用はいくらかかるのか―。いまさら聞けないCIMの基本をQ&A方式で解説する。

Q どれくらい実施されているの?

 国土交通省は2012年度に直轄事業にCIMを導入。国交省の基準に沿って18年度の直轄事業でCIMを導入した件数は、212件と前年度比で6割増えた。累計は630件。19年度は約400件に倍増させる。他にも、建設会社などが独自にCIMを導入した案件は数多い。

 国交省は当初、直轄事業の詳細設計でCIMを導入したが、その後は工事での活用が設計を上回るようになった。ただ、施工から維持管理への3次元データの引き継ぎが進まないために、国交省は建設生産の早い段階での導入が必要と判断。18年度に橋梁やトンネル、ダムなどの詳細設計を対象にCIMを原則化した。その結果、18年度は設計での活用が増え、施工の2倍以上になった。

■ 2019年度は前年度比倍増
■ 2019年度は前年度比倍増
国土交通省の直轄事業へのCIM導入件数。国交省の資料を基に日経コンストラクションが作成
[画像のクリックで拡大表示]

A 設計と工事で7年間に累計630件

Q どんな工事に導入されているの?

 国交省の直轄事業では、CIMの作業手順や留意点をまとめた「CIM導入ガイドライン」に基づいて、業務や工事でCIMを活用している。ガイドラインは、基本事項を示した共通編と、土工、河川、ダム、橋梁、トンネル、機械設備、下水道、地滑りの8編とから成る。19年5月の改定で、下水道と地滑りの2編が新たに加わった。

 国交省では、大臣官房技術調査課が担当している同ガイドラインとは別に、港湾局が「CIM導入ガイドライン港湾編」を作成している。旧建設省と旧運輸省の組織の壁を象徴しているが、港湾編の作成によってCIMの導入対象に港湾も含まれるようになった。ガイドラインの各分野の対象施設は、下表の通り。

■ 砂防や下水道などに拡大
分野 対象施設
道路 橋梁、トンネル、道路土工構造物
河川・ダム ダム、水門、樋門・樋管、堤防、護岸
砂防 地滑り防止施設
下水道 処理施設、ポンプ施設
港湾 水域施設、外郭施設、係留施設
国土交通省の直轄事業でのCIM導入対象。国交省の資料を基に日経コンストラクションが作成

A CIM導入ガイドラインが整備された施設

Q どれくらいの効果があるの?

 国交省は、CIM活用事業で2016~17年度に完了した設計を対象に、業務ごとの作業量の削減状況を調べた。その結果、従来比で最も削減効果が大きかったのは住民らとの「協議」だ。CIM実施報告で作業量の減少に言及した7社では、削減率が平均60%に上った。完成後や施工途中の姿を3次元で見せると分かりやすくなるため、資料の作り直しなどの手間が省けた。半面、3次元データの作製に伴う作業量の増加分は考慮されていないため、業務全体の削減効果は明らかでない。その定量化は困難だ。

■ 数量計算と設計計画は5割減
■ 数量計算と設計計画は5割減
設計でのCIM活用による作業量(人・日)の従来業務に対する割合。各業務ともCIM実施報告で作業量の減少に言及した企業の平均値。企業数は、設計計画4、数量計算11、施工計画2、照査6、協議7。国交省の資料を基に日経コンストラクションが作成
[画像のクリックで拡大表示]

A 設計では協議で作業量が6割減