全2351文字
PR

 ダイハツ工業は2019年11月5日、小型SUV(多目的スポーツ車)「ロッキー」を発売すると発表した。OEM供給先となる親会社のトヨタ自動車を重視した車両だ。2016年に完全子会社になったダイハツが、トヨタの“小型車部門”として名実ともに機能し始めたことを象徴する。一方でダイハツの実力不足の側面も浮かんできた。

ロッキーの外観(撮影:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]
ロッキーの外観(撮影:日経 xTECH)

 ロッキーの価格は約170万円からで、ダイハツの開発車両では“最高級品”。安価な軽自動車が主力のダイハツで多く売れるとは思えず、「ライズ」の車名で売るトヨタへの貢献を重んじたと映る。実際にライズの販売目標は月4100台で、ダイハツ・ロッキーの同2000台を大きく上回る。

 トヨタにとって、かねて鬼門と言える小型車開発。利益面の貢献が小さく、三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアアナリストの杉本浩一氏は、小型車事業は「ギリギリ黒字ではないか」と分析する。「中大型車が主力のトヨタの基準で小型車を造ると、高価になりがち」(英調査会社IHSマークイットオートモーティブでアナリストの西本真敏氏)との指摘もある。

 安く造るのに長けたダイハツに小型車開発を移管することは、グループ戦略として合理的である。ダイハツが開発したライズの販売で、トヨタは苦戦する小型車部門の利益を増やしたい。

ダイハツに170万円超は高過ぎる

 ロッキー・ライズがトヨタの戦略に沿った商品であることは、2020年まで見据えたSUVの品ぞろえで一目瞭然だ。まだ公表していないが、トヨタには2020年にBセグメントの新しいSUVを投入する計画がある。トヨタで最も小さなSUVに位置付けられるライズと合わせると、中小型SUVをきれいに品ぞろえできる。

 約170万円からのライズ(ロッキー)、約200万円からと想定されるBセグメントの新SUV(車名は未定)、Cセグメント以上では約240万円からの「C-HR」、約270万円からの「RAV4」、約300万円からの「ハリアー」と、30万~40万円刻みで整然とそろう。

 車両寸法もトヨタの顧客を向いており、大きめだ。ロッキー・ライズはダイハツの新しい「Aセグメント」(同社)のプラットフォーム(PF)を採用した車両だが、全長は3950mmで、よくある定義では1段上のBセグメントに位置付けられる寸法に大きくした。トヨタ車の保有者からの“ダウンサイジング需要”を取り込みやすくした。

Aセグメント用の新しいプラットフォーム。「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」と呼ぶ開発指針に基づいたもの。軽自動車用に続く第2弾。今後は「ブーン」や「トール」にも採用していくはずだ。(撮影:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]
Aセグメント用の新しいプラットフォーム。「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」と呼ぶ開発指針に基づいたもの。軽自動車用に続く第2弾。今後は「ブーン」や「トール」にも採用していくはずだ。(撮影:日経 xTECH)

 逆にダイハツ側から見ると、ロッキーの重要性は小さい。150万円以上の車両を国内で売る力は弱いからだ。例えばダイハツの小型車には約150万円からの「トール」があるが、OEM供給先のトヨタ「タンク」「ルーミー」の販売台数の1/5以下にとどまる。

 ダイハツの既存の顧客で、約170万円からのロッキーに乗り換える層は少ないだろう。多く売るには新規顧客の開拓が必須で、手間と時間がかかり、後回しにしたくなる。