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NANDフラッシュメモリーはTLC NANDが主流

 SSDに搭載する「NANDフラッシュメモリー」は、「TLC NAND」という方式が主流だ。TLCはTriple Level Cellの略で、1セルあたりに3ビットの情報を記録できる方式である。

NANDフラッシュメモリーの種類と書き換え回数
NANDフラッシュメモリーの種類と書き換え回数
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 2018年から1セルに4ビットを記録するQLC(Quad Level Cell)のNANDフラッシュメモリーを採用したSSD製品も登場した。ただし現在はまだ、TLC NANDフラッシュメモリーを搭載した製品が圧倒的多数を占める。QLCに関しては、まだ低価格になっておらず割高な印象がある。現状の価格では購入メリットがないため、2020年に普及するにはさらなる低価格化や大容量化を進めることが必要だろう。

 NANDフラッシュメモリーに記録する情報は、多いほど低価格化や大容量化をしやすくなる。その一方で、耐久性と性能(特に書き込み性能)は落ちる。TLCの技術が成熟したこともあり、最近の新製品で、SLCかMLCを搭載するものは少数派だ。

 TLCやQLCの書き込み性能は、空き容量をSLC相当で動作させてキャッシュとして利用するしくみを使ってカバーしている。「SLCモードキャッシュ」「疑似SLCキャッシュ」などと呼ばれる。キャッシュ容量を超えるデータを書き込むと性能が大きく落ちる。特にQLC NANDフラッシュメモリーは落ち込みが極端で、100Mバイト/秒程度にまでなってしまう。

 100Mバイト/秒というとHDDよりも遅いが、これは「一般的なユーザーは大容量の書き込みを頻繁には行わない」という前提のもとに設計されている。低価格で大容量というメリットがあるQLC NANDフラッシュメモリー搭載SSDだが、こうした性格のものだと理解した上で購入する必要がある。

QLC NANDフラッシュメモリーを搭載したインテルの「Intel 660p」。公称スペックはシーケンシャルリード/ライトとも1800Mバイト/秒だが、SLCモードキャッシュの容量を超えた部分の書き込み性能は100Mバイト/秒程度に落ち込む
QLC NANDフラッシュメモリーを搭載したインテルの「Intel 660p」。公称スペックはシーケンシャルリード/ライトとも1800Mバイト/秒だが、SLCモードキャッシュの容量を超えた部分の書き込み性能は100Mバイト/秒程度に落ち込む
(撮影:鈴木雅暢)
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インテルが注力するOptaneストレージ

 インテルは、米マイクロン・テクノロジーと共同開発した「3D XPoint Technology」をベースにしたフラッシュメモリー「Optane Media」を用いたストレージに力を入れている。

 Optane Mediaは、NANDフラッシュメモリーに比べてランダムアクセスのレイテンシーが短く、書き込みに対する耐久性が高いことが特徴だ。書き換え回数は、SLC NANDフラッシュメモリーの1000倍に上る。

 インテルは、Optane Media搭載デバイスを「Optane Memory」や「Optane SSD」として展開している。Optane Memoryは、HDDのキャッシュとして使うことを前提とした小容量のSSDだ。HDDと組み合わせて使うと、比較的低コストでSSDに近いレスポンスと大容量を両立できる。そのため一般用途向けの大画面ノートPCやデスクトップPCなどで採用されている。

 Optane SSDは、単体のSSDとして運用されることを想定した製品。「Optane SSD 905P」などのモデルがある。また、Optane MediaとQLC NANDフラッシュメモリーを搭載した「Optane Memory H10」といったモデルも発表している。

 Optane Memory H10は、低コスト大容量のQLC NANDフラッシュメモリーをメインとして利用しつつ、低レイテンシーで耐久性の高いOptane MediaキャッシュでQLCの弱点をカバーすることで全体のパフォーマンスを向上させた製品だ。インテルによれば特にマルチタスク環境で強く、ファイルコピーをしながらアプリケーションを起動するといった処理で通常のTLC SSDを大きく上回る性能を発揮するという。

 Optane Mediaを使用したストレージを搭載するPCは、2020年もさらに増えていくと思われる。

Optane MediaとQLC NANDフラッシュメモリーを搭載した「Optane Memory H10」
Optane MediaとQLC NANDフラッシュメモリーを搭載した「Optane Memory H10」
(撮影:鈴木雅暢)
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