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 「2035年にハイブリッド車(HEV)を含むガソリン車とディーゼル車を販売禁止にする」。2020年2月5日、欧州連合(EU)から離脱した英国政府はこのように発表した。

 これまで欧州各国や各都市では、2040年までにHEVを除くガソリン車とディーゼル車を廃止するという目標を掲げていた(表1)。英国はその目標を5年前倒しすると共に、HEVも対象とするように方針を転換した。これは、実質全てのクルマを走行時にCO2を排出しない、電気自動車(EV)か燃料電池車(FCV)にしていくという宣言と受け取れる。これは、欧州全体の方向性が変化していることを意味するのだろうか。

表1 欧州諸国の主な都市が掲げた都市中心部での排ガス規制
表1 欧州諸国の主な都市が掲げた都市中心部での排ガス規制
車から排出される窒素酸化物(NOx)などの排気物質を、市内に持ち込ませないために、欧州の主な都市ではガソリン車の中心部への乗り入れを2030年頃をめどに規制する方針だ。(出所:AICE)
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 そもそも内燃機関大国と言われてきた欧州では、これまで、アウトバーン(高速道路)のような道路網が発達していることから高速走行で長距離を移動するケースが多く、EVやFCVではまだ航続距離の点で顧客の需要を満たせないと言われていた。

 また、ドイツ圏では、ドイツ・ダイムラー(Daimler)や同BMWなどに代表されるような排気量が大きい高級セダンの需要が強く、高速走行および長距離を移動する際に使用するクルマとしての比率も高い。これらのクルマはディーゼル車の比率が50%近くあることを考慮すると、欧州は内燃機関が発達している地域という印象が強かった。

 そのため、これまでの欧州における電動化のシナリオは、車が走行する距離でカテゴリーを分けて論じられてきた。街中で使用される小型車を「City」、移動距離の多いセダン系を「Mid Distance」、そして、長距離輸送の大型トラックを「Long Distance」と定義。それぞれ順に、「EV」、「プラグインハイブリッド車(PHEV)」、「FCV」を最適な電動化のシナリオの中心車両としている(図1)。つまり、「電動化+ゼロエミッション」に向けてかじを切りつつも、高速かつ長距離を狙いとするセダン系の車は、内燃機関をキー技術として残した。

図1 将来の電動車両のすみ分け
図1 将来の電動車両のすみ分け
電動化のシナリオは、短距離の移動を目的とした小型車には電気自動車(EV)、長距離輸送などを主とした大型トラックなどには燃料電池車(FCV)、中距離の移動が主となるセダン系の自動車にはプラグインハイブリッド車(PHEV)を中心に据えるという想定だ。(出所:AICE)
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 今後の欧州全体の方向性について、各自動車メーカーの動向からひもといてみよう。