AICE(自動車用内燃機関技術研究組合)として特に注力している研究テーマが熱効率の向上だ。正味熱効率で50%超という目標に向けて、(1)理論熱効率の向上、(2)冷却損失の低減、(3)摩擦損失の低減、(4)廃熱回収の4つの領域でプロジェクトが進行している。(編集部)
正味熱効率で50%超の熱効率とゼロエミッションを両立するエンジンの実現に向けて、AICEは30件以上の研究テーマを走らせている。研究形態としては、「プロジェクト研究」と「萌芽(ほうが)的研究」の2つのカテゴリーがある。
プロジェクト研究は、“産"からの具体的研究ニーズに基づいた研究である。これに“学"のシーズを組み合わせ、産学協同で取り組み、双方にとって価値の高い成果創出を狙う。産は、研究成果をレポートだけでなく、計測手法や物理モデルとして受け取ることを明確に要求する。2019年度から計21件の研究テーマを実行している。
萌芽的研究を設定したのは、将来有望となるシーズを探索し、今後のプロジェクト研究への発展につなげるためだ。大学・研究機関からの自由な発想を重視し、サイエンスの発展を促進させる狙いもある。2019年度に10件の研究を開始し、2020年度に2件を追加予定である。
熱効率に関する4つの課題を解決へ
プロジェクト研究と萌芽的研究の両面から解決を目指す重要テーマが、熱効率の向上である。30件以上のテーマのうち、20件が熱効率に関するものだ。
熱効率の向上には、(1)理論熱効率の向上、(2)冷却損失の低減、(3)摩擦損失の低減、(4)廃熱回収の4つを実現する必要がある。これらの課題に対して、AICEではいくつかの研究テーマを実施している(表)。
例えば、理論熱効率の向上に向けた方策として、理論空燃比よりも薄い混合気で燃焼させる希薄燃焼(リーン燃焼)がある。リーン燃焼を実現するためには、点火・火炎伝播の促進に関する研究だけでなく、圧縮比(膨張比)向上のためのノッキング(異常燃焼)限界向上も目的とした燃料特性の研究を実施している(図1)。拡散燃焼形態のディーゼル燃焼においては、燃焼期間の短縮を狙った急速に拡散かつ局所でもリーン状態で燃焼させるための研究を進めている。