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環境に対する排ガスのゼロインパクトに挑戦するAICE(自動車用内燃機関技術研究組合)。その設立の発端から現状に至るまでの活動の概要と、今後進める次世代の排ガス後処理技術の研究について解説してもらう。(編集部)

 昨今、内燃機関を取り巻く環境は激変している。AICEでは2020年に、50年以降を見据えた持続性ある低二酸化炭素(CO2)および低エミッションへのシナリオを作成した。それに基づき、現存する困りごとの解決に向けた研究から同シナリオの達成に向けた研究へと、研究テーマを移行しつつある。今回は、現在までの活動を俯瞰(ふかん)し、具体例を紹介する。

排気後処理の共同研究からスタート

 AICE設立の発端になったのが、12年に開始した自動車技術会の乗用車用ディーゼルエンジン研究会である。同研究会ではその開始当時、研究テーマの決定に時間を要した。

 同じディーゼルエンジンでも自動車会社によって開発課題や優先度は異なる。乗用車/商用車でのエンジンの使われ方に始まり、RDE(Real Driving Emissions)を見据えたEGR(排ガス再循環)の導入方法、窒素酸化物(NOx)触媒やDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)再生システムなどの組み合わせ方が各社で微妙に異なるのである。まずは困りごとを可能な範囲で紹介し合い、互いに共通のキーワードを見つけ、その根底にある不可解な現象解明の合意に至る必要があった。こうして選定したのが、初年度のDPFのすす堆積と再生機能、2年目からのEGRデポジット抑制と、DOC(酸化触媒)からの白煙発生抑制の3テーマである。その後、各社の専門家が集まり、研究内容や研究実施者を決め、ワーキングスタイルの研究運営を実施した。この2年の実績が自動車会社7社による共同研究への自信を与え、AICEの設立につながった。

 AICEを設立した14年、それまで取り組んできた3テーマを基本に組合員企業7社によるクリーンディーゼル技術の高度化に帰する研究テーマを策定した。ここでDPFは非常に多岐にわたる技術課題があることから、5つのテーマに拡張した(図1)。根幹となる(1)内部現象解明に加え、(2)DPF再生技術高度化、(3) NOx削減機能を追加した多成分浄化機能(SCRDPF) 、(4)SCRDPFに投入する革新的NOx低減触媒、(5)故障診断機能高度化、である。これらは量産技術ではあるが改良の余地を残すもの、直近の排ガス低減や燃費改善につながるもの、また排ガスセンサーを介してOBD(車載式故障診断装置)に反映されるものである。合計7テーマに対し各社からワーキングリーダーとサブリーダーを出し、産業技術総合研究所(産総研)や日本自動車研究所(JARI)と協力し、研究してもらう先生を探し計画を具体化した。

図1 研究開発項目(3項目)と研究テーマ(7テーマ)
図1 研究開発項目(3項目)と研究テーマ(7テーマ)
(出所:AICE)
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