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これまで11回の連載で、AICE(自動車用内燃機関技術研究組合)の設立の背景から具体的な研究内容まで取り組みを説明してきた。最終回となる今回は、日本独自の産学官連携活動を通して、AICEが描く日本の未来について紹介する。(編集部)

 2014年4月の設立から、AICEは「日本の産業界の発展への貢献」と「将来の日本を担う若手技術者の育成」の2つの理念を掲げている。設立から5年がたった19年4月には、自動車メーカー9社と2団体の組合員に加え、約80社の共同研究企業が参加する第2次AICEをスタートさせた。設立当初から受け継いだ2つの理念は、今後も変わらないだろう。

 AICEの共同研究企業に着目すると、部品メーカーが最も多く、計測器メーカー、エンジニアリング会社と続き、日本の産業界を支える業種が参加している(図1)。会社の規模も、グローバルに事業を展開する大企業から従業員数が10人程度の中小企業までと幅広く、企業と企業をつなぐ新しいネットワークづくりの場になっている。現在、AICEの研究を推進するためのワーキンググループ(WG)には、産からの技術者995人が参加し、その約半数の554人が共同研究企業からの参加だ。

図1 AICEの構成メンバー(2020年9月)
図1 AICEの構成メンバー(2020年9月)
従来の組合員(自動車メーカー9社+2団体)に加え、19年4月から共同研究企業として約80社が参加している。現在のメンバーは、多様な業種で構成されている。(出所:AICE)
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AICEの成果を支える4つの事業

 日本の産業界全体の大規模な活動に成長したことを受け、AICEは新たにその役割として2つのミッションステートメントを掲げた。

1.「CASE」との融合により、内燃機関の進化を加速し、ゼロエミッションを目指す

2.ゼロエミッション社会の実現に向けて、日本の産業界をリードしていく

 2つの理念(AICEの存在意義)に加え、2つのミッション(AICEの使命)を明確にしたことで、AICEの取り組むべき研究領域がより明確になった。具体的には、内燃機関から排出される二酸化炭素(CO2)や有害物質の排出をなくす「ゼロエミッション」に関わる全ての研究領域をAICEが主導する。

 ゼロエミッションは車両の走行中だけでなく、Well-to-Wheel(1次エネルギーの採掘から走行まで)での実現を目指す。目標達成に向けて取り組むべき研究領域は多岐にわたる(図2)。エンジンの効率向上だけではなく、組み合わせるモーターや2次電池の効率向上、自動運転の効果の検証、CO2の回収・有効利用、そして燃料やエネルギーに至るまで、広範囲に及ぶ。

図2 AICEの研究領域
図2 AICEの研究領域
エンジンの効率を高める研究だけでなく、ゼロエミッションの実現に向けて幅広いテーマに取り組んでいる。(出所:AICE)
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 しかし、全ての領域をカバーするのは個社だけでは困難で、様々な業界の横断的な取り組みが必要である。これらの広範囲な領域を俯瞰(ふかん)的に捉え、それぞれの技術分野における役割・方向性を明確にして、日本の産業界をリードすることがAICEの役割と定めた。

 そこで、世界の動きを把握し、AICEが目指すゼロエミッション社会の実現に向けて、研究を確実に進めるため、「調査事業」を加えた4事業体制とすることとした(図3)。

図3 AICEの成果を支える4事業
図3 AICEの成果を支える4事業
内燃機関(ICE)車を用いたゼロエミッションに関わる「研究領域」はAICEが主導する。電動化や自動運転などCASEの動向を把握する「調査事業」は外部の専門組織との連携を積極的に進めて効率化を図る。図中では、Dは次元の意味で使っている。(出所:AICE)
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 これまでの内燃機関車を用いたゼロエミッションに関わる「研究事業」に、調査事業を加えることで、電動系部品や自動運転、さらに「カーボンリサイクル」などの最新の技術動向をAICEの研究に反映させていく。そして、モデルベース開発(MBD)に取り組む「MBD事業」と車両およびエンジンの性能を評価する「ベンチマーク事業」を含めた4事業によって、ゼロエミッションに向けた技術ロードマップを常に更新しながら、成果を具体的に見える形にしていく予定である。