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 厳しくなる環境問題の中で、再定義される内燃機関の在り方。産官学を連携した自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)は、新技術研究の役割を担う。本連載では、AICEの活動を通じ、内燃機関の課題と将来の技術について解説。第1回は、自動車メーカーが置かれている状況を紹介する。(日経 xTECH/日経Automotive編集部)

 「内燃機関の将来は危ない」─。そんな声をよく聞くが、果たして本当にそうなのだろうか。

 様々なところで言われることだが、今、自動車業界は、大きな転換期を迎えている。世界各国の排出ガス規制や燃費規制の強化に伴うエンジン制御の高度化、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)などの新しいユニットの開発の加速、そして新興国のモータリゼーションも見据えた開発リソースや開発スピードへの対応などが大きな課題だ。

 中でも、世界的に大きな社会問題となっている“地球温暖化”への対応は、自動車メーカーにとって道は険しい。経済産業省が進める「自動車新時代戦略会議」では、新車の乗用車のWell-to-Wheel(1次エネルギーの採掘から走行まで)におけるCO2排出量を2010年と比較して2050年には90%削減するという目標が示されている(図1)。

図1 CO<sub>2</sub>の削減目標
図1 CO2の削減目標
経済産業省の「自動車新時代戦略会議」によると、国が2050年に目指す乗用車におけるCO2排出量の削減量は、2010年比で90%の削減だ。経済産業省の資料を基に、日経Automotiveが作成。
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 それだけに、「CO2量削減の目標を達成するには、燃料電池車(FCV)や電動化が不可欠であり、内燃機関だけでは不可能」という考えから「内燃機関の将来は危ない」という話に発想が飛躍してしまったのではないだろうか。

 確かに図2に示した2012年時点の国際エネルギー機関(IEA)による将来のパワーソース予想のように、EVや電動化した車はCO2量削減のためには欠かせない。だが、その内訳を考慮すると、2050年時点でもHEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)が70%程度を占めており、何らかの形で内燃機関が必要であると我々は考えている。つまり、内燃機関は終息に向かうのではなく、技術革新が必要なのである。

図2 将来のパワーソース予測
図2 将来のパワーソース予測
2050年はハイブリッド車とプラグインハイブリッド車が半数近くの割合を占めていると予測。内燃機関のさらなる進化が必要だ。(出所:IEA-MMo2012)
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 とは言え、EVやFCVといった新たな領域における技術開発と内燃機関の技術革新を両立させることは困難だ。どの企業も新しい技術に力を注がざるを得なく、内燃機関に力を割きにくいのも事実だ。このままでは、本当に内燃機関の将来が危なくなってしまう。

 このような思いが、企業の垣根を越えて日本の自動車メーカーを突き動かした。2014年4月、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダといった国内メーカーと日本自動車研究所(JARI)、産業技術総合研究所(AIST)が中心となり、基礎応用領域の共同研究を行う組織として「自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)」が誕生した。

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