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 「価格が高いよりは、安いほうがいい」「予算を超過するより、予算内でできるほうがいい」。住宅リフォームのコストについて、ほとんどの顧客はこのように思っているだろう。しかし一方で顧客は、プロならでは提案を求めている。そこを忘れてしまうと、顧客に満足感を与えることはできない。

 プロの提案に満足感を得られなかった顧客は、当然のことながら不満を抱く。ボタンの掛け違いから始まって、深刻なクレームを招いてしまうケースもある。こうしたクレーム事例をいくつか紹介する。

事例1
予算重視の提案が「安っぽい」とクレーム

 「リフォームを検討しているから、自宅に来てくれ」。こんな電話を受けた住宅会社の営業担当Aさんは、顧客Bさんの家を訪ねた。リビング・ダイニング・キッチン(LDK)を中心とする模様替えリフォームの案件だった。現況を確認しながらBさんと話していると、既に競合複数社から見積もりを取っている様子。「室内の雰囲気を変えてもらいたいんだ。3社から見積もりを取ったが、どれも予算より高くてね」とBさんは話した。

 「コストを気にしているお客さんだな」。そう判断したAさんは、できるだけ安価な仕様で提案をまとめることにした。壁紙や床材は汎用品のなかで最も安いタイプにしたほか、下地材の処理や養生なども含めて、全般的に最低水準のコストで見積もった。総額はBさんが示した予算の範囲内で、建材などの仕様についてAさんはBさんに「自社の標準品です」と説明。最終的にこのリフォーム案件を受注できた。

(イラスト:勝田 登司夫)
(イラスト:勝田 登司夫)
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 工事は問題なく終わり、引き渡した直後、Bさんからクレームが寄せられた。「完成してみたら、あまりにも安っぽくて貧相だ。これではリフォーム前と変わらないじゃないか」。住宅会社のAさんは「コストの範囲で良いものを選んだ」と説明を繰り返し、ようやく矛を収めてもらったが、Bさんは最後まで不満顔を隠さなかった。

 Bさんのクレームに対処しながら、Aさんも自らの誤りに気づいた。「確かにBさんは最初、『雰囲気を変えたい』と話していた。コストを抑えることだけが要望ではなかったのだ」。予算のなかでどのようなことが可能か、どの程度の上積みで何が可能かなど、提案のバリエーションが圧倒的に不足していたと反省する。