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第一生命保険は2016年秋からRPAの導入を進めてきた。推進体制や開発案件の選定方法で工夫を凝らすことで、2019年10月までに年15万7000時間分の業務をRPAで自動化できた。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)によってオフィス業務を自動化する範囲を広げたい。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のように外注費がかさむことなく、技術としても確立されたRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用していこう――。

 こうした理由で2018年春からRPAの全社展開を始めたのが第一生命保険だ。個人保険に関する業務を主な適用対象に導入を進めたところ、2019年10月までに約620種類の業務に適用し、年15万7000時間分のPC作業を自動化する成果を得た。

1万件ものデータ変更を自動化したり早出をなくしたりする

 なかには1万件といった規模のデータを限られた期間でまとめて処理するPC作業を自動化できた事例もある。「PC作業をする担当者の負担をなくせた。担当者が作業を続けると疲れて転記ミスが起こりがちだったが、RPAに変えてからそれもなくなった」と第一生命保険の前泊圭事務企画部部長は効果を語る。

 働き方改革につながる活用例も出てきた。ある業務部門で毎朝9時に開くミーティングの前に、資料をRPAで自動作成できるようにした。自動化する前は、その業務部門の担当者は資料作成のために、社内システムが現場から利用できるようになる毎朝8時ごろに出社する必要があった。社内システムにアクセスしてデータをダウンロードしたうえで、Excelを使って資料を作成していた。

 この一連のPC作業も手順が決まっていることからRPAで自動化した。その結果、業務担当者は朝早く出社する必要がなくなったという。

専門組織と推進役で社内普及が加速

 第一生命は2016年10月からRPAの導入に向けて動き出した。2016年10月からのおよそ9カ月間で、PoC(概念実証)やRPAツールの選定、開発・運用体制の整備などを進めた。2017年7月から9カ月間のトライアル期間を経て、本格展開に乗り出した。

 RPAツールには、ソフトロボが操作対象にできるシステムやアプリケーションが多いといった理由から米オートメーション・エニウェアの「Automation Anywhere Enterprise」と、価格が割安などの理由で英ブループリズムの「Blue Prism」の2種類を選んだ。

 RPAを社内に普及させるうえで実施した特徴的な取り組みが2つある。保険事務を統括している事務企画部がRPAの推進や標準化を担う専門組織「CoE(センター・オブ・エクセレンス)」の役割を担っていることと、各業務現場にRPAの推進役である「RPAアンバサダー」を配置していることだ。

 CoEを設置しているのは、かつて業務に必要なアプリケーションを現場が開発するEUC(エンド・ユーザー・コンピューティング)を推進していて課題に直面したことが大きい。当時のEUCには業務担当者が社内で使っているグループウエアソフト「Notes」を使っていた。

 Notesアプリケーションの開発や管理は各業務現場に任せていた。しかし開発した担当者の異動をきっかけに、メンテナンスが十分にできなくなるといった課題に直面した。「RPAで同じような課題に直面しないよう、CoEがソフトロボの開発や管理を担うことにした」(前泊部長)

 一方のRPAアンバサダーは、業務の現場からRPAの適用アイデアを出しやすくすることを狙った施策だ。30代で「アシスタントマネージャー」などの役職を持つような業務担当者にRPAアンバサダーを担ってもらっている。社内に150人ほどが各現場で適用案件のとりまとめなどに当たっている。