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JFEスチール、JFE商事、JFEエンジニアリングのJFEグループの主要3社は、互いに情報を共有しながら自社の業務現場へRPAの適用を進めている。

 JFEスチール、JFE商事、JFEエンジニアリングのJFEグループの主要3社は、ソフトウエアのロボット(ソフトロボ)で手順が決まったPC作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入によって大きな成果を挙げている。

 総務や経理といった間接部門だけにとどまらず、製鉄所や商社営業、プラント建設といった現場でPC作業の自動化を進めている。2020年3月までに3社合わせて、年6万時間以上のPC作業を自動化する見込みだ。「従業員のストレス軽減も重要な働き方改革」との経営陣の方針の下、時間短縮以外の観点でもRPAの適用を進めている。3社それぞれの取り組みを紹介しよう。

JFEスチール:製鉄所の操業実績の把握などに適用

 鉄鋼メーカーのJFEスチールは2017年にRPAの導入検証を始めた。2017年はJFEスチールが「ワークスタイル変革元年」と位置付けた年でもあった。「ワークスタイル変革の手段の1つにRPAが適用できないかと考えて試験導入した」と、JFEスチールの和田徹也IT改革推進部業務改革グループリーダー主任部員(部長)は説明する。

広報や人事部門と組んでRPAの普及を図る

 2018年4月に業務担当者が主体となって適用を進めていくボトムアップ型でRPAの普及を図ることにした。RPAがどのようなものかを業務担当者が把握して、適用アイデアを出してもらいやすくするため、IT改革推進部は広報部門と連携した。「巧(うま)い、疾(はや)い、易(やす)い」というキャッチフレーズを掲げたうえで社内向けWebサイトなどを通して、RPAがどのような技術なのかや、RPAを現場に適用した先行事例を紹介した。

 社内で導入が進むと、RPAの一覧表を全社に公開した。どのようなPC作業にRPAが適用できるのかや、RPAを適用するメリットを、多くの業務担当者につかんでもらうことを狙った。

 その結果、2018年は総務部門などの仕事を中心にRPAの導入が進んだ。具体的には、海外に多くある事務所にExcelファイルをメールで一斉に送信するソフトロボや、海外の事務所からメールで届いたExcelファイルを取り込んで、内容を一覧表にまとめるソフトロボなどを稼働できた。

 2019年4月からはより一層RPAの普及を図るため、トップダウン型アプローチも加えた。具体的には人事部門とも連携して全社規模の働き方改革の一環としてRPAの導入を進めていくことにした。

JFEスチールが進めてきたRPAの社内普及の流れ
JFEスチールが進めてきたRPAの社内普及の流れ
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製鉄所の工場長らが結果をコミット、効果高める工夫を凝らす

 製鉄所にある工場などのトップの協力を得て、RPAで自動化するPC作業の時間のほか「部署内の働き方をどう変えていきたいか」といったことをについて宣言したうえで達成を目指してもらった。加えて製鉄所内のIT部門に、現場への普及を支援する推進役を担ってもらうことにした。

 RPAはROI(費用対効果)の高いPC作業から導入を進めた。それが一巡すると「複数の拠点で行っている同じPC作業をまとめて自動化する動きにつながった」(和田主任部員)という。

 例えば、製鉄所に複数ある地区のうち、ある地区の担当者が自動化したいPC作業を提案すると、他の地区にも同様のPC作業がないかを確認した。もしあれば合わせて自動化していった。経理など本社に統括組織を持つ部門は、本社部門が各地区の部門で行っている同じようなPC作業をとりまとめたうえで、RPAで自動化していった。

150業務の年2万8000時間分の作業を自動化

 こうした工夫が奏功して、1年半ほどの取り組みで約150業務にRPAを適用することで、年2万8000時間分のPC作業を自動化する見通しだ。150種類ほどある業務のうち半分近くが工場関連だという。

 代表的な活用例が工場の操業実績に関するデータなどを基に、製品の歩留まりなどの情報を集計するPC作業の自動化だ。これまでは工場担当者が毎月のように人手で行っていたが、その手間をRPAで省くことができた。

 工場でRPAの適用が進んだことについて和田主任部員は「工場で働き方改革を進めていこうという動きが高まっていたことが大きい」と説明する。特に工場の管理職に対しては、PC作業が中心のデスクワークを効率化することで、工場内の現場にいる時間を増やすことを会社として促していた。管理職が現場に出て作業進捗や課題を実感することで、より円滑な現場運営ができるようにするなどの効果を狙った取り組みである。

 2019年12月には、ソフトロボの稼働状況を監視するツールを導入した。「開発したソフトロボが有効に活用されているかどうかを確認できるようにする」(和田主任部員)ことを狙った。JFEスチールは米ユーアイパスのRPAツール「UiPath」を採用している。開発作業を担うJFEシステムズが販売代理店になったことなどを踏まえて、採用を決めたという。

 今後について和田主任部員は「工場担当者が自らソフトロボを作れるようにしていきたい」と話す。工場にはエンジニアが多いことから、自分たちで現場の業務を効率よく自動化していけるようにする。そのために自動化してよいPC作業など開発や運用に関するルールや教育体制、開発基盤の整備を進めていく予定だ。

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