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富士フイルムは2017年、経理部門のパソコン作業を対象にRPAの導入をスタートさせた。そこで効果が得られたことから、デジタル変革の手段の1つとしてRPAの本格展開を開始。作り手を広げるなど多面的な策を講じて、社内普及を加速させている。

 高度なITを積極的に採り入れて、製品・サービスの高度化や社内の業務効率化を進めよう――。こうした社内活動の一環で、ソフトウエアのロボットでパソコンの定型作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入を進めてきたのが、富士フイルムだ。

 高度なITの導入は2013年ごろ、世間でビッグデータの活用に注目が集まったことなどを受けて始めた。2014年に「社員のITリテラシーを高めて仕事のやり方を変革していく」という目的でICTの活用を推進するプロジェクトをスタートさせた。

 その2年後の2016年には2つの組織を立ち上げてICT活用を加速させた。同社が得意とする画像関連技術に加えて、自然言語処理や数値データの解析技術を積極的に導入するインフォマティクス研究所と、ITを使って事業活動の高度化や間接部門の業務効率化を全社で進めるICT戦略推進室である。

 「RPAはこうした全社的なITの積極活用の機運が高まっているなかで導入が始まった」と、富士フイルムホールディングスの杉本征剛執行役員CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)は振り返る。

経理部門でまず導入、成果を得て全社に展開

 富士フイルムで最初にRPAを導入したのは経理部門だった。2017年のことだ。「RPAの得意領域はパソコンの定型業務。そのような業務が多い経理部門で活用できるかどうかPoC(概念実証)をかねて適用してみることにした」と富士フイルムホールディングスICT戦略推進室の伊藤聡一郎マネージャーは説明する。

 IT部門と連携して進めたところ、経理部門におけるパソコン作業の自動化に成功した。これを受けて2017年10月に、各業務部門におけるRPAを含めたデジタル施策を全社で取りまとめる「デジタル変革委員会」を立ち上げた。RPAの普及については、同じ富士フイルムホールディングス傘下の事業会社である富士ゼロックスとも連携するため、2018年2月に富士フイルムホールディングスで「RI(Robotic Innovation)室」と呼ぶ推進組織を設立している。

 推進組織を立ち上げた当初は、情報システム部門が中心となってRPAの開発を進めた。そのうちに社内から「各部門の業務に即した効率化をRPAで進めていきたい」といったニーズが高まってきた。そこで推進組織を立ち上げて半年ほどたったころに、RPA開発の体制を拡充させた。情報システム部門に加えて、業務部門でもRPA開発に取り組めるようにしたのだ。RPA開発で「二刀流」を採用したわけだ。

富士フイルムにおけるRPA導入の役割分担
担当部門担う役割
情報システム部門自動化する業務範囲が広いソフトロボや部門共通で使えるソフトロボなどを開発
業務部門業務部門内の業務を効率化するソフトロボを開発。情報システム部門が教育研修などで支援する

 具体的には、自動化の対象業務が広範にわたったり、分岐処理を組み込む必要があるなど対象業務が複雑だったりする場合は、情報システム部門がRPAの開発を担当することにした。加えて、情報システム部門は各業務部門が共通で使えるようなソフトウエアのロボット(ソフトロボ)を意味する「共通ロボ」の開発も担当。これまでに社内の基幹システムからデータをダウンロードするソフトロボや、メールを送信するソフトロボなどを開発して業務部門に提供している。