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ダイキン工業は「攻めのIT」施策の一環でRPAの導入を2017年から始めた。RPAの特徴と適用業務を踏まえて社内普及の体制を整備したところ、60種類、年1万時間分のPC作業を自動化する成果を得ている。

 RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で自動化できるPC作業や社内で適用できる業務を考えると、IT部門がRPAを内製する体制がベスト――。こう判断してRPAを社内で普及させてきたのが、店舗やオフィス、住宅向けのエアコンや空調システムなどを手掛けるダイキン工業だ。

 ダイキン工業のIT部門であるIT推進部はRPAの社内普及について、先進技術を取り入れて業務部門に活用を提案する「攻めのIT」の施策と位置付けて取り組んできた。同社は2015年春にIT推進部の中に、先進技術の活用提案をする組織「IT創発グループ」を結成した。この組織はIT部員とシステム子会社であるダイキン情報システムのメンバーからなる。需要予測や画像認識、VR(仮想現実)といった先進技術の検証や活用提案を進めてきた。

ソフトロボの特徴と適用業務を踏まえてIT部門が内製へ

 RPAも先進技術の1つとみなす。RPAの検証は2017年3月IT創発グループが始めた。2週間ほどの期間でRPAツールを使ってソフトウエアのロボット(ソフトロボ)を開発。検証を踏まえて、社内にRPAを広げていくうえで適切な体制を探った。

 その結果、「IT部門がRPAを内製する体制を整える」という冒頭の結論を得た。結論に至った決め手は2つある。1つは「あらゆるPC作業を自動化できる」というRPAの特徴だった。

ダイキン工業がRPAの検証段階で得た気づきとそれを踏まえて打ち出した開発方針
ダイキン工業がRPAの検証段階で得た気づきとそれを踏まえて打ち出した開発方針
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 RPAによって業務担当者が日々行うPC作業を広く自動化できる。しかし作り方によっては基幹系システムに何度もアクセスして高負荷がかかるような処理も自動化できてしまう。

 短時間に繰り返し社外のWebサイトにアクセスするような処理をRPAのソフトロボにさせるとサイバーアタックを仕掛けていると誤解を与える恐れもある。「ガバナンスを効かせて開発していく必要があると見えてきた」とダイキン工業の廣瀬忠史IT推進部IT企画担当課長は話す。

 もう1つの決め手はRPAで自動化する対象業務だ。ダイキン工業ではかなりの業務を基幹系システムで効率化している。そのためRPAで自動化するのは多くの社員が行うPC作業よりもむしろ、数人など限られた社員が繰り返し行っているPC作業が多くなりそうだということが見えてきた。

 こうした作業を自動化するために外部のベンダーに開発を依頼すると、費用対効果が見込めない。「ITガバナンスを効かせながら内製化する体制が必要と考えて、IT部門がRPA開発を担う体制を整えることにした」(廣瀬担当課長)。

PoCで内製スキルを磨き開発のコツをつかむ

 2017年6月からはいくつかの業務部門の協力を得て、RPAを実際に業務へ適用してみるPoC(概念実証)を始めた。IT創発グループのメンバーがRPAの開発スキルを身に付けるため、PoCの期間に限って外部のITベンダーに協力を要請。RPA開発の教育研修を受けたり、開発していくうえでのポイントなどを整理していったりした。

 PoCでは開発時に作成するドキュメントの内容も見極めた。当初は「RPAはマウス操作で簡単にPC作業を自動化できる特徴がある。それに合わせて開発に必要な仕様をまとめたドキュメントも分量を最小限に抑えたい」といった理由で、ドキュメントの内容はPC作業の概要レベルにとどめて開発してみた。

 開発は順調に進んだものの、ソフトロボが稼働して保守に入った後「PC作業の概要レベルの仕様ではメンテナンスすべき作業を特定するのが難しい」といった課題が見えてきた。そこで「A画面の入力項目をクリックしてからテキストデータを入力する」といった、作業のステップ単位で仕様をまとめたうえで、開発することにした。

システムのデータ移行ソフトロボも誕生

 こうしたPoCは2017年6月から8月にかけて実施し、開発の手順をまとめたり、開発を進めるうえで作成するドキュメントを整備したりした。2017年9月にPoCを振り返ったうえで、ドキュメントを見直したり開発支援体制やプロセスを固めたりした。2017年10月から本格的に社内普及へと乗り出した。