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RPAに向くのは経理や事務部門のPC作業の自動化だ。そんな強いイメージがあるなか、三菱ケミカルはあえて工場の業務からRPAの導入を始めた。

 2017年4月、三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンの3つの事業会社が統合して新しい会社が生まれた。IT部門も「新生IT部門」として、新しい技術を取り込むなどこれまでとは違った取り組みにもチャレンジしていこう――。

 こんな目標のもと、PC作業をソフトウエアのロボット(ソフトロボ)で自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の社内導入を進めているのが、三菱ケミカルのIT部門だ。同社は合成樹脂などの原料になるベンゼンやエチレンといった基礎石油化学製品から、ディスプレーや半導体などに使われる情報電子材料まで幅広く手掛けている。

 2017年4月からの1年はグループのIT会社、三菱ケミカルシステムが中心となって、RPAのソフトロボの開発・運用基盤を整えるなど、グループ内でRPAを導入していく準備を進めた。

 RPAツールはソフトロボの管理のしやすさなどを踏まえて、米オートメーション・エニウェア(Automation Anywhere)のRPAツール「Automation Anywhere Enterprise」を採用した。三菱ケミカルの業務担当者は要件定義などに関わるが、開発作業は基本的に三菱ケミカルシステムのITエンジニアが担う体制にしている。ただしRPA開発を希望する業務担当者には、自身でも開発作業を進められるようにしている。

工場担当者から適用アイデアが600件寄せられる

 2018年4月、三菱ケミカルは現場へのRPA適用を本格的に始めた。「全社一斉にRPAの導入を進めると、ITの統制が取りづらくなる。当社は製造業ということもあり、まずは工場への導入から始めることにした。ある工場の協力も得られた」と、三菱ケミカルの山﨑泰彦情報システム部事業所グループマネジャーは説明する。

 山﨑マネジャーらが協力を得ることができたのは福岡県北九州市にある福岡事業所の工場担当者たちだ。事業所内の工場の全部門でRPAを適用できないか検討することにした。

三菱ケミカル福岡事業所の外観。食物由来のバイオプラスチックや水処理に使うイオン交換樹脂など様々な製品を手掛けている
三菱ケミカル福岡事業所の外観。食物由来のバイオプラスチックや水処理に使うイオン交換樹脂など様々な製品を手掛けている
(出所:三菱ケミカル)
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 しかし「RPAを適用したい仕事は何ですか」と尋ねて適用業務の案を募っても、まだRPAが広く知られていない時期だったこともあり、案が出てこない恐れがあった。そこで山﨑マネジャーらはあえて「自分自身の仕事で変えていきたいもの」を挙げてもらい、そのなかからRPAを適用できそうなPC作業を洗い出すことにした。

 できる限り多く挙げてもらうように依頼したところ、福岡事業所の工場担当者たちから600件の候補が集まった。「こんなに集まったことにとても驚いた。1000人弱いる事業所の担当者たちが積極的に協力してくれた」と山﨑マネジャーは振り返る。

 山﨑マネジャーらはこの600件のなかからRPAに適用できそうなPC作業を洗い出すことにした。「PC作業を行う頻度や、作業にかかっている時間は多いか」「作業で扱うデータの件数が多く、大きな成果が得られそうか」といった観点で見極めたところ、30件がRPAの適用に向くことが分かった。残る候補については「Excelのマクロを適用する」「仕事の仕方を見直す」「システムの追加開発案件として検討する」といったRPA以外で実現する策を検討していった。

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