仮想通貨マイニング関連の特許出願状況について、ハイテク分野の特許調査に強みのあるスマートワークスが調査・分析した。2015年頃から出願が増え始め、日本よりも海外(特に中国・米国)での技術開発が進んでいる状況が浮き彫りになった。出願内容からは、電源や熱対策に対する技術開発が重要になっていることが見えてくる。
仮想通貨のマイニングにはハッシュ(ハッシュ値、ハッシュ関数)と呼ばれるデータが使用される。仮想通貨の1つ、ビットコインで使用されるハッシュは「SHA-256」と「RIPEMD-160」である注1)。ハッシュ関数計算用装置(ASIC、IC、マイクロプロセッサーなど)に関する特許出願を見てみると、1990年以降は増加傾向にあり、とりわけ2010年以降には米国、中国を中心に一段と増加している(図1)。一方、日本の特許出願は2005年以降やや減少傾向である。韓国、台湾、インドの年間出願件数はゼロあるいは10件未満だった注2)。
マイニング用ASICの特許出願
今回の分析では海外特許を中心に34件のマイニング用ASIC関連出願が確認できた。特許出願年で見ると、2013年頃から出願が始まり、2018年6月時点で確認できた特許出願の時期は2015~2016年に集中している。近年注目されている分野でもあり、今回検出できなかった未公開出願(2017年以降の出願分)が一定数存在すると推察される。複数(2件以上)の特許出願が確認できたのは以下の4社である(表1)。これら4社の出願内容と併せて示す。
(1)米21. Inc.注3)。マイニングの高速化/低消費電力化に特徴がある。処理コア間で論理回路を共有することによって、チップ面積の増加と電力効率を改善するものや、難易度比較回路を設けることで速く効果的な検索を実行する技術を特許出願している。
(2)米Intel。マイニング用プロセッサーを出願しており、内容は演算方法が主体である。少量の先頭ビットに基づいて無効ナンスの大部分を排除することができる注4)。従って大量の電力を消費することなく、迅速に完全なハッシュ値を計算できる。
(3)中国Bitmain。マイニング用マシンや電源回路付きASICを出願している。2つの処理モジュールとそれぞれの入力方法を最適化することにより、計算の複雑さと電力消費を大幅に低減する。
(4)イスラエルSpondoolies注5)。演算プロセスに関する出願を行い、目的は演算の高速化と消費電力抑制している。ウォーターフォールプロセスを利用し、計算量を抑えることによって消費電力の低減を図っている。
その他、調査時点で「1件のみ特許出願を確認」できた企業・個人は19名義だった。この中では「ZHEJIANG SAIJIA HOLDINGS」「SHENZHEN QIANHAI CLOUDMINDS」「SUANFENG TECHNOLOGY (BEIJING)」など、中国企業と推定される企業名が多く、出願件数全体の伸長と合わせて、中国での技術開発の活性化がうかがえる。