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 「世界におけるテック企業の第三極を作りたい」――。Zホールディングス(ZHD)の川辺健太郎社長は2019年11月18日、LINEとの経営統合で目指す姿をこう表現した。対抗する相手として挙げたのが米中のテックジャイアント。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)とBAT(バイドゥ、アリババ集団、テンセント)だ。

経営統合会見に臨んだZホールディングスの川辺健太郎社長(左)とLINEの出沢剛社長
経営統合会見に臨んだZホールディングスの川辺健太郎社長(左)とLINEの出沢剛社長
(写真:村田 和聡)
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 BATの一角を占める中国アリババ集団は、ヤフーと同じくソフトバンクグループの傘下であり、ヤフー・LINE連合が目指すとしている「スーパーアプリ」の先駆者でもある。スーパーアプリとはEC(電子商取引)や決済、金融、タクシー配車などあらゆるサービスの入り口となるアプリを指す。

 ヤフー・LINE連合は経営統合によってアリババを目指すのか。会見で両社の社長は、独禁当局の審査を理由に個々のサービスについて統合後の具体的な方針を明言しなかった。そんななかでも統合後の方向性がはっきりしているサービスが1つある。信用スコアリングだ。

 信用スコアリングとは利用者の属性やITサービスの利用状況といった様々なデータを基に信用度を数値で算出する仕組みである。事業者はスコアリングの結果を基に特定サービスを提供したり特典を与えたりと、利用者1人ひとりに合ったサービスを提供する。

パーソナライズの「要」

 現状、ヤフーもLINEも信用スコアリングに力を入れている。ヤフーは「Yahoo!スコア」、LINEは「LINE Score」をそれぞれ2019年6月に発表した。その3カ月後にLINEは信用スコアを使った個人向けローン「LINE Pocket Money」を始めた。

 両社は利用者1人ひとりに合ったサービスや情報を提供する「パーソナライズ」を、事業強化の基本方針に位置付けている。信用スコアリングはパーソナライズを運営する要でもある。

 アリババ集団も傘下のアント・フィナンシャルを通じて信用スコアリングサービス「芝麻(ジーマ)信用」を提供している。中国における信用スコアリングの代表的な存在だ。

 ではヤフーもLINEも芝麻信用を見習うのか。

 記者の考える答えは「ノー」である。むしろ芝麻信用と「同類」と見なされないように、芝麻信用を反面教師にして信用スコアリングのサービスを設計するはずだ。これが現時点ではっきりしている、ヤフー・LINE連合が手掛けるサービスの方向性である。

 反面教師にする理由は何か。芝麻信用に定着した「格差を生むサービス」とのイメージを、何としても回避したいはずだからだ。

 芝麻信用の基本的な仕組みや機能はLINE Scoreなどと同じだ。利用者の様々なパーソナルデータを基に「信用度」を点数化する。分析対象のデータは金融機関での決済履歴や預金額、学歴など。さらに芝麻信用はLINE ScoreやYahoo!スコアと違い、ソーシャルメディアでの知名度や交友関係のデータも使っている。

 芝麻信用には様々なメリットがあるとされる。スコアが高い利用者は、ローンの金利を優遇されたりシェアリングサービスのデポジット(保証金)が要らなかったりする。特に全ての人々が必要な金融サービスを受けられるようにする「金融包摂」に貢献し、中国でより多くの人が便利に暮らせるようになったとの評価がある。