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目視点検だけでは「変な橋」と見抜けず、補修工事で初めて発覚するケースがある。例えば、奈良県東吉野村にある市場(いちば)橋だ。
この橋は1926年に国道の一部として架設。その後、新たな国道が整備されるとともに県に移管され、さらに2010年には村の管理になった。橋長12.5m、全幅員6.7m、有効幅員5.6mの単純RC(鉄筋コンクリート)T桁橋だ(写真1)。
移管を繰り返したために、補修の履歴などは残っていない。東吉野村が持っているのは施設台帳のみだ。神楽橋のように桁下から見上げても、上部構造におかしな点は見つからない。
東吉野村は建設コンサルタント会社に委託して、14年に市場橋の定期点検を実施した。その結果、健全度は予防保全の措置が望ましいレベルIIと判定。ただし、定期点検が法令化される以前の遠方目視で「要補修」と判定していたことに加え、村道の中では使用頻度の高い重要な橋だったことから、補修の優先順位を上げて18年度予算で工事を発注した。
市場橋では凍結防止剤混じりの水による塩害の影響を受け、主桁と床版下部に鉄筋の露出やコンクリートの浮き、剥離が発生していた(写真2)。そのため上部工の補修工事では、桁下の断面修復やひび割れ充填を実施し、炭素繊維板を巻き立てて補強。加えて、舗装の下に防水材を敷設する計画だった。
しかし、補修工事の終盤で舗装を剥がしたところ、床版の上に約25cmもの砕石層が見つかった(写真3)。「前後の道路との高さ調整のためではないか」。砕石の発覚後に東吉野村から相談を受けた災害科学研究所社会基盤維持管理研究会の古市亨幹事長は、こう推察する。