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緊急性がないのに、全ての損傷を一度に補修しようとする設計が後を絶たない。予防保全の推進に異論はないが、多くの自治体は維持管理に費やせる予算が限られている。設計を担う建設コンサルタント会社などに対して、発注者が補修の範囲や仕様をきちんと指示しなければ、補修費はかさむばかり。健全度IIIの損傷を5年以内に補修できなくなる。

 診断では、床版や桁などの部材種別ごとに変状を評価して、総合的に橋全体の健全度を判定する。例えば、床版がIII、桁がII、地覆がIIであれば、構造部材である床版がIIIなので、橋の健全度はIIIとなる。

 その際、健全度IIIの部材を直すと同時に、IIと判定した部材も全て補修する設計図書が、建設コンサルタント会社から納品される傾向にある。特に地覆のひび割れや高欄の損傷など、補修の緊急性が低い部材も設計に盛り込みがちだ(図1)。

図1■ 何でも健全度Iに直したがる傾向に
図1■ 何でも健全度Iに直したがる傾向に
ある自治体の補修後の橋面の様子
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 建設コンサルタント会社が、全ての損傷部材の補修設計を提案するのは、自然なことだ。問題はそれを受けて、深く考えずに提案をうのみにする発注者にある。本来は予算と補修すべき橋との数を比べて、5年以内に補修を終わらせることが可能か否かをまず判断する。そのうえで、補修設計の範囲を発注者が適切に決め、発注図書に表示しなければならない。

 補修で目指す健全度にも再考の余地がある。「健全度IIIを全てIに直すのではなく、損傷原因を除去した上でいったんIIに戻すという方法も考えるべきだ」。島根県で、橋の点検直営化の取り組みを推進している同県の石倉英明・橋梁点検部会員(土木部高速道調整グループ企画員)は、こう指摘する。