特集「テスラの最新EV『モデル3』徹底分解」の第2回は、実車試験の後編である。第1回で報じたように、運転支援機能「オートパイロット(Autopilot)」の作動時に優れたブレーキ制御を披露した米テスラ(Tesla)の電気自動車(EV)「モデル3」。では、緊急自動ブレーキの性能はどうか。Teslaは、車両と2輪車、歩行者には作動すると公表している。それ以外の対象物で試してみた。
壁を模して重ねた段ボールに、モデル3は減速することなく突っ込んでいった(図1)。
本特集の第1回で紹介したように、人に対して高い認識能力を示したモデル3の自動ブレーキ機能。同じ車両とは思えないほどに、壁との衝突時は無反応だった。
歩行者の認識能力は高かったが…
モデル3は、周辺監視用センサーとして8個のカメラ(ルームミラー前に3眼カメラ、フェンダーに2個、センターピラーに2個、リアに1個)、12個の超音波センサー(前後に6個ずつ)、1個のミリ波レーダーを備える。
このうち、緊急時の自動ブレーキで重要な役割を担うのが3眼カメラである。検知範囲の異なる3個のカメラを並べた。長距離を認識するカメラは最長で250m先の車両や歩行者を認識できる。
実際、歩行者を模したダミーは、100m以上離れていても検知した。人の存在は、車内のダッシュボード中央付近に配置した15インチの液晶ディスプレーに、人のイラストが表示されることで確認できる。
モデル3の緊急自動ブレーキ機能は他社のシステムと同様に、衝突の可能性が高まるとまず、警告音や表示によって運転者に危険を知らせる(図2)。それでも運転者が衝突の回避行動をとらないと、自動で急ブレーキを作動させて衝突の被害を軽減する。
自動車メーカーが緊急自動ブレーキ機能の開発で強く意識しているのが、欧州で自動車アセスメントを手掛けるEuroNCAPだ。EuroNCAPは、車両や歩行者、自転車を衝突のターゲットに設定した緊急自動ブレーキ試験を実施中。最高評価の5つ星を獲得するために、各社はEuroNCAPの試験シナリオに対応できるように自動ブレーキ機能を作り込んでいる。
では、EuroNCAPのシナリオ以外の条件でも自動ブレーキは作動するのか――。