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 新型の電気自動車(EV)を購入して独自に分解調査する企画の第2弾が始動した。今回、日経 xTECH/日経Automotiveと日経BP総研のプロジェクトチームが購入したのは米テスラ(Tesla)の量販EV「モデル3」だ。特集「テスラの最新EV『モデル3』徹底分解」としてモデル3の内部を中心に紹介していく予定だが、分解の前にTeslaが自信を見せる自動ブレーキ機能を実車試験で評価した。

 「あれ、ブレーキ踏みましたか?」

自動ブレーキ試験の様子

運転支援機能「オートパイロット(Autopilot)」をオンにした状態(前半)とオフにした状態(後半)で比較した。(撮影:日経Automotive)

 運転者に確認してしまうほど自然に停止した。足がブレーキペダルに触れることなく、歩行者を模したダミーの約4m手前でクルマは動きを止めた(図1)。減速を始めたのは30m手前。通常の緊急自動ブレーキの3倍の余裕を持って停止の準備を開始することが分かった。

図1 歩行者ダミーの4m手前で緩やかに車両が停止
図1 歩行者ダミーの4m手前で緩やかに車両が停止
Tesla「モデル3」の自動ブレーキ試験の様子。独自評価として、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を作動させた状態での自動ブレーキ性能を検証した。(撮影:日経Automotive)
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 測定した速度や加速度のデータからも、急減速することなく緩やかに速度を落としていく様子を確認できた(図2)。

図2 歩行者ダミーの30m以上手前から緩やかに減速を開始
図2 歩行者ダミーの30m以上手前から緩やかに減速を開始
ACCを作動させた条件での自動ブレーキ試験の結果。速度と加速度のデータを測定した。図は日経Automotiveが作成。
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 「私がブレーキするよりも優しく止まった」。運転者は違和感のない速度制御に舌を巻いた。

 滑らかなブレーキングを披露したのは、米テスラ(Tesla)の電気自動車(EV)「モデル3」である。詳しくは後述するが、Teslaの運転支援機能「オートパイロット(Autopilot)」の実力を確かめるための試験を実施した。

 目の前の歩行者との衝突を回避しつつ、運転者を保護できるのか――。

 確認したかったのはこの点だ。Autopilotを作動させると、システムは積極的に運転に介入する。ここで問題になるのが、車両の制御をシステムに任せてしまう運転者が出てくることだ。

 システムを信用しすぎて注意が散漫になった運転者に対して、Tesla車は警告を発して注意を促す。それでも、油断した運転者がとっさの危険を瞬時に察知してブレーキをかけるのは難しい。衝突の直前で緊急自動ブレーキを作動させると、運転者は身構えることができず、身体にダメージを負うこともある。

 こうした課題は、時代が自動運転へと向かう中で日増しに大きくなるだろう。完全自動運転の実現を目指すTeslaは課題を認識し、対策を講じているのか。この疑問を解消するため、Autopilotのオン/オフによって、歩行者との衝突を回避するための制御が異なるのかを実車試験で確認することにした。

最新コンピューター搭載のモデル3を調達

 試験したモデル3は、日経 xTECHと日経BP総研による最新EVの分解調査プロジェクトのために購入したものだ。分解によって再生不可能な状態になる前に、自動ブレーキ機能を評価することにした。実車試験は、新潟県某所の私有地で行った。

 この車両は、Teslaにとって第3世代となる最新の運転支援システム用の車載コンピューター「HW3.0」を搭載する。自動運転機能を実現するために、Teslaが自社開発したSoC(System on a Chip)を2個備える。分解で確認したHW3.0の内部の様子は、本特集で公開する予定。