今、ビジネスパーソンの副業を後押しする動きが活発だ。政府は2019年6月に公表した「成長戦略実行計画」の柱の1つとして「副業」を位置づけた。働き方の幅を広げて人材の流動性を高める狙いがある。ではITエンジニアを副業者として「輩出」する側のIT企業は現在、どんな取り組みをしているのか。
日経コンピュータは2019年10月末から11月初めにかけて、ITベンダーやネット企業などITエンジニアを多く雇用する代表的なIT企業を対象に、副業に関するアンケート調査をした。その結果、回答企業21社のうち76%に当たる16社が副業を「容認」していると答えた。既に主要IT企業では副業が社員の権利となりつつある。
ただし個別に見ると、各社の間には温度差があった。副業に積極的な企業の代表例がSCSK、サイボウズ、ソフトバンクの3社である。
2012年にいち早く副業制度を導入したサイボウズは、今では原則として会社の許可や申請すら不要だ。2017年に、社員がサイボウズで働く日数や業務量・内容を自由に取り決められる労働形態を全面導入したからだ。サイボウズに週3日勤務し他社とも雇用契約を結ぶ兼業ワーカーや、業務委託契約で働くフリーランスが増えている。副業者の人数は把握していないが「推定で3割弱の社員が他の業務を持っている」(人事部)という。
2019年1月に副業を解禁したSCSKは、制度導入から約10カ月で副業の申請が95件に達した。SCSKの人事部は今後も制度の認知度向上や普及を進める方針だ。ソフトバンクは全社員2万人弱のうち、2%強に当たる548人が副業に従事している。
SCSKとソフトバンクに共通するのは「社外でスキルを磨く」「社外との交流でイノベーションを生む」といった効果を期待する点だ。検証はこれからだが、社外のベンチャー事業に参画する社員が増えるなど、いずれも手応えはあるという。