副業はメリットばかりではない。副業を解禁する企業と副業者を活用する企業にはそれぞれ課題がある。
日経コンピュータが実施したアンケート調査によると、副業を容認する企業が挙げる課題の上位2つは「労務管理の煩雑さ」と「本業との競合」だ。現状の課題もしくは副業を認める際の懸念点として、21社中8社が労務管理が煩雑になる点を指摘。5社が本業と競合する恐れがある点を挙げた。
社員が2社に雇用されて時間拘束の下で働くと、労働時間を合算して管理する必要が生じる。そこで副業を認める企業の多くが時間管理の煩雑さを避けるために、時間拘束がない業務委託契約などの副業に限定している。
本業との競合は「利益相反」を指す。就業規則を整備して副業による利益相反がないかを申告に基づいてチェックする。
例えばソフトバンクは副業を認める際に、副業先について自社グループが取り扱う製品やサービスとの競合関係がないかを確認している。同社は幅広いIT商材を扱っており、社員が気付かないうちに競合が発生している恐れがある。事前のチェックは副業を容認する側の責任と言える。
実力以下の仕事は嫌がられる
一方、副業者を活用する企業にもいくつかの課題がある。
1つ目の課題は、適切な人材とのマッチングが難しい点だ。副業マッチングサービス事業者への取材を総合すると、ITエンジニアの副業はスキルレベル別に「技術顧問」「コンサルタント」「SE/プログラマー」「クラウドソーシング」に4分類できる。仕事内容を明確に定義せず、どのレベルに合致するかを考えずに人材を求めると、適切な副業者にたどり着くのは難しい。
実際に求める役割よりもスキルの低い副業者を受け入れると成果は上がらない。逆にオーバースペックな人材を受け入れると副業者が定着しない恐れがある。「ハイレベルなIT人材は金銭よりも面白さや知見の幅を広げる機会を副業に求めている」(副業者紹介を手掛けるLiberaの張智寛執行役員)からだ。
2つ目の課題は時給が上昇傾向にあることだ。もともと専門スキルを要求するだけに時給単価は相場より高めだ。副業マッチングサービスを手掛けるシューマツワーカーの松村幸弥CEO(最高経営責任者)は「今はまだ副業したい人の数が求人数を上回っている。だが今後(副業者を)受け入れたい企業が増えれば、さらに報酬額が上昇する」と話す。