賃貸リノベーションの全国ブランドとして、500超のフランチャイズチェーン(FC)加盟店を集める「Renotta(リノッタ)」。開発・運営するクラスコ(金沢市)は、IT(情報技術)やAI(人工知能)などを駆使し、不動産会社や賃貸オーナー向けのサービスを次々と打ち出している。これらのサービスをまとめたのが総合ソリューション「TATSUJIN」だ。TATSUJINは不動産会社の業務をどう変えるのか。クラスコグループの代表を務める小村典弘氏にインタビューした。
生産性向上の基本は「標準化」
賃貸リノベーションを手掛ける不動産会社の間で、クラスコはデザインリノベーションブランド「リノッタ」で広く知られています。近年はさまざまな業務効率化や生産性向上のためのシステムを精力的に開発・提供し、「TATSUJIN」と総称する一大ソリューションにまで発展させています。サービスメニューを急速に拡大する動機や目的は何でしょう。
従来型の、非効率的な不動産業界のシステムや慣習を変えたいという思いからです。さまざまなビジネス分野でITを活用した効率化が図られている中、不動産業界は依然マンパワーに頼りがちで、非効率的な業務体系が残されています。社員が思い思いのスタイルで動いており、分からないことは当人に聞くしかない。これでは業務の標準化がなされず、生産性も高まりません。
2014年7月 、小村社長がクラスコグループの代表に就任した際、真っ先に取り組んだのも社内業務のデジタル化でした。
旧来のビジネスモデルを更新していかないと生き残っていけないと思っていました。そのためにはすべての業務を標準化するなどして1人ひとりの生産性を高め、空いた時間でお客様が満足できるサービスの提供に努めるべきだと考えたわけです。ただ、当時は導入したくても、「不動産テック」と呼べるものがほとんどありませんでした。ならば自前でつくろう、というのがスタートです。
自社用だけのソフトであればもちろんペイできません。しかし私たちが困っているわけですから、他の不動産会社も将来きっと必要になるとの思いで開発に取りかかりました。使いやすくて生産性を高めるソフトがあれば、きっと使ってもらえるだろうと。
ただ、アナログ的な業務をデジタル化するだけで生産性が向上する「デジタル・シフト・ボーナス」が得られることは見えていました。レッドオーシャン分野であれば投資できなかったでしょうが、恩恵を受けるには早いほうがいいと思って取り組みました。
手始めに業務の標準的なマニュアルを定め、これを業務改善ツールとしてソフト化し、社員教育などに活用していきました。インターネットにもアップし、これがやがて「きょういくん」というeラーニングシステムとして、TATSUJINの重要なツールとなります。
テキストやビデオ教材でなく、eラーニングシステムにすることのメリットはどのようなものですか。
社員がいつでもどこでも学習できることと、当人の習熟度を確かめながら進めることです。昔の研修スタイルだと、ただ一方的に伝える「インプット」のみに留まりがちで、どれだけ理解したかのチェックがなされていなかった。今は講義動画の後に、理解度や進捗を確認する小テストが設けられています。一定の点を取らないと次に進めないから、社員も必死になります。また、講義の動画を繰り返し確認したり、2倍速で聴いたり、といった方法も使え、理解のしやすさやスピードアップにつながっています。