築古で競争力の落ちた賃貸物件をデザインリノベーションで再生し、新築住宅にない価値を提供する。クラスコ(金沢市)のリノベーションブランド「Renotta(リノッタ)」は、2012年に全国展開を開始してから2020年3月までに、賃貸リノベーションで500超のフランチャイズチェーン(FC)加盟店を擁するブランドへと成長した。リノッタは、同社の総合ソリューション「TATSUJIN」のキラーコンテンツでもある。そのリノッタの強みについて、クラスコグループ代表の小村典弘氏にインタビューした。
デザインリノベーションで他に2つとない物件に
日本では全国で人口減少が始まっているにもかかわらず、相変わらず賃貸住宅の新規供給が続いています。一方で、2018年の住宅・土地統計調査によると全国の賃貸物件の半分以上が築20年を超えるそうです。既存物件、特に築古物件の競争力が相対的に下がっていくなか、賃貸管理会社としてどのような提案が必要とお考えですか。
古い物件だからといって単に賃料を下げて注目させるのでは、オーナーの利益率が下がりますし、入居者も価格以外に魅力がないと判断して長く入居してくれません。そこで、リノベーションなどを行うことで再生し、新築にない価値を持たせることが大切です。幸いなことに、最近は築年にそうこだわらない入居者が増えており、むしろ「リノベーション」が入居希望者の気にするワードになっています。
クラスコは常々、「デザインの力」で物件の価値を高めるとおっしゃっていますが、意図することを教えてください。
単に表層のデザインでなく、デザインを通じて価値やつくり手の意志を投影することで、その物件をいかにブランディングするかが大切です。私たちは「リノッタ」というリノベーションブランドで室内のデザインはもちろん、ネーミングや、プロモーションビデオの制作まで、パッケージでブランド価値を高める提案を行っています。
具体的な再生手法はどのようなものでしょうか。
私たちは「一戸一絵のリノベーション」と呼んでいます。他にないコンセプトによる部屋づくりを行い、ひと部屋ごとに異なるデザインのマンションをつくり、希少性を演出していきます。既に400以上のデザインパターンを蓄積しており、FC加盟店は物件のターゲットに合ったデザインを選んで賃貸オーナーに提案できます。
リノベーション費用は、投資分析によって算出した工事費と改修後の設定家賃を複数提案し、オーナーの意向に添ったプランを選んでいただき、再生します。再生後は、バーチャルステージングで住み方を提案するなどして、消費者に物件の価値や魅力を訴求します。バーチャルステージングとは、室内写真に家具やインテリアを合成することで、室内の空間性をより強くイメージしてもらうための演出です。併せて、360°カメラの写真や動画などによるプロモーションで訴求します(プロモーションについては次回解説)。
デザイン提案をパッケージ化しているわけですね。
デザインはもちろんですが、不動産投資の理論に基づいた提案ノウハウなど、感性に頼るのでない“裏付け”のあるサービスの提供に努めてきました。今、申し上げた「複数案の提案」もその1つです。リノッタの立ち上げ当初から投資分析ソフトを用意し、キャッシュフローを最大化できる方法について科学的に提示してきました。
また、リノベーション工事の手順や費用概算などについても、施工マニュアルとしてノウハウを開示しています。というのは、施工会社が高めの見積もりを出す可能性もあるからです。発注側に適正なコスト意識があれば、見積額も妥当なものになっていきます。さらに、リノベーション資材も共通で仕入れる仕組みをつくり、最大75%オフで提供しています。壁紙など自社で開発した商品もあります。こうした仕組みによって、1件平均で40万円くらいのコストダウンを実現できています。
デザインにとどまらないノウハウ提供が全国で支持されているわけですね。
地方の不動産会社に対し、当初は個別にコンサルティングを行っていたのですが、リノッタの視察希望者が毎週40人以上も金沢にある当社を訪れるような状況が続きました。どの不動産会社もクラスコに導入したテクノロジーやデザイン力に高い関心を持ってくださったため、FC化しました。今やリノッタは全国500以上のFC加盟店に参画していただいています。
築50年の物件であっても、新築にない希少性を持たせることは可能です。諦めて何もせず賃料ダウンさせるのでなく、正しい投資による再生提案が、賃貸ストックの価値を最大化させます。